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2026.07.24
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ホンダ独自のハイブリッド「e:HEV」って何がスゴい? 新たに「S+Shift」も搭載で“無敵”に? 車好きなら誰でも「笑顔」になる画期的ハイブリッドの特徴とは?

e:HEVって何がスゴい?

 ホンダは現在、各モデルで独自の2モーターハイブリッド「e:HEV」を展開しています。
 
 そもそもe:HEVとはどのようなもので、何が凄いのでしょうか。自動車研究家 山本シンヤ氏がこれまでの取材で得た知見をもとに、解説します。

【画像】超カッコイイ! これがホンダ独自の「e:HEV」搭載モデルです! 画像で見る(30枚)

 2021年、ホンダの三部 敏宏社長が発表した「2040年にグローバルでの新車販売をすべてBEV(電気自動車)とFCEV(燃料電池車)にする」という電動化戦略。

 昨今のBEV市場の急激な変化や世界各国での法規制の変動を受け、同社は2040年目標の骨子は維持しつつも、現実的な軌道修正を図っています。

 その移行期を支えるべく、現在ホンダはハイブリッド(HEV)戦略の大幅な「見直しと強化」を行っています。

 ただ、勘違いして欲しくないのは、ホンダが目先の情勢に慌てて既存のHEV技術を使い回し、「お茶を濁そう」としているわけではないという点です。

 彼らの言い分は、「当初のシナリオ通り、次世代BEVの仕込みと並行して基幹となるエンジン、ドライブユニット、制御系をすべて刷新した『次世代e:HEV』の開発を着実に進めています」とのことでした。

「スポーツe:HEV」と「Honda S+Shift」を搭載するホンダ「シビック e:HEV RS」[マイナーチェンジモデル/2026年6月発売]
「スポーツe:HEV」と「Honda S+Shift」を搭載するホンダ「シビック e:HEV RS」[マイナーチェンジモデル/2026年6月発売]

 そんな現場のエンジニアたちの強い意志と野心から生まれたe:HEVは、単なる環境技術の枠を超え、これまでのHEVとは違う「クルマ好きをも満足させるパワーユニット」へと進化させています。

 ホンダの4輪事業において、ハイブリッドの歴史は約4割を占める25年以上にもおよびます。現時点での最適解である「e:HEV」に辿り着くまでには、数々の果敢な挑戦とそこから得た「反省」があるのです。

 その原点は、1999年デビューの初代「インサイト」に搭載された「IMA」に遡ります。エンジンを主役に据え、薄型モーターでアシストするシンプルなパラレル式でしたが、トヨタの「THS II」(シリーズ・パラレル式)に対抗するには、燃費性能やEV走行領域の面で不利な部分も。

 6速MTの組み合わせが可能というIMAの強みを活かし、ハイブリッドスポーツの「CR-Z」を発売したものの、好転はせず。

 そこでホンダは2012年、一気に巻き返しを図るべく、マシンのサイズやキャラクターに合わせて3つの異なるシステムを使い分ける「スポーツハイブリッドシリーズ」を発表しました。

 小型車用は1モーター+DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を組み合わせ、ダイレクトな走りを追求した「i-DCD」、中型車用は現在の礎となる、2モーター式の高効率システム「i-MMD」、そして大型・高級車用は3モーターを駆使し、驚異的な旋回性能を生み出す「SH-AWD」です。

 これらはどれも極めて独創的で、ホンダらしい個性に溢れていましたが、同時に大きな課題も抱えていました。

 i-DCDは、初期の信頼性確保に苦しみ、SH-AWDは複雑さゆえにコストと重量が跳ね上がり横展開が難しかった。そして中型車用のi-MMDは、高い環境性能を実現したものの、効率重視すぎてドライバーの五感に響く爽快さという点では物足りなさも。

「どれだけ優れたシステムでも、コストを抑え、ホンダらしい『走りの爽快さ』を伴わなければ、ユーザーにその真価は伝わらない」――。この歴史の反省こそが、現在のe:HEVを生み出す最大の原動力となったのです。

「スポーツe:HEV」と「Honda S+Shift」を搭載するホンダ「シビック e:HEV RS」[マイナーチェンジモデル/2026年6月発売]
「スポーツe:HEV」と「Honda S+Shift」を搭載するホンダ「シビック e:HEV RS」[マイナーチェンジモデル/2026年6月発売]

 では、e:HEVの強みとは何でしょうか。

 e:HEVは、コンパクトからミドルクラスまで幅広く対応できる「シンプルな構造と優れた量産性」が特徴ですが、個人的に2リッターエンジンを組み合わせた「スポーツe:HEV」は、過去の3つのシステムの「いい所取り」だと思っています。

 同システムの基本的な構造・考え方はi-MMDと同じですが、「よりコンパクト」、「より高効率」、そして「よりドライビングファン(fun)」を目指して進化しています。

 e:HEVをおさらいすると、ハイブリッド専用エンジンと駆動用・発電用モーター、パワーコントロールユニット、そしてリチウムイオンバッテリーを組み合わせたシステムで、基本はエンジンが発電用モーターを回し、その電力で駆動用モーターがタイヤを回します。

 駆動用バッテリー残量がある時は、モーターならではのスムーズかつレスポンスに優れた「EVドライブモード」が基本ですが、強い加速が必要な場合はエンジンを始動して発電用モーターを駆動、その電力を走行用モーターに供給して駆動を行なう「ハイブリッドドライブモード」に切り替わりますが、さらにプラスαがあるのがe:HEVです。

 その秘密は「エンジンの軸と車軸を直結するためのクラッチ」です。高速道路での走行などで、モーターの効率よりもエンジンの効率が良いと判断した時に、エンジンの駆動を直接タイヤに伝える「エンジンドライブモード」へと切り替わります。

 つまり、普段はシリーズ式ハイブリッド、必要な時にパラレル式ハイブリッドに切り替わるのです。

 ちなみにエンジンドライブモード時も、細かな制御が行われていることはほとんど知られていません。例えば、エンジンの駆動力が余剰だと判断した場合には「発電して」バッテリーに電力を貯める。逆にエンジンだけでは駆動力が足りない場合は「モーターがそっとアシスト」を行っています。

 ただ、エンジンドライブ時の制御の切り替えは音の変化やショックもないため、ドライバーはもちろん、同乗者も気付きません。つまり、モーターとエンジンの得意領域を走行条件に合わせてシームレスに使い分けるのが、e:HEVのコア思想なのです。

 組み合わされるエンジンはどうでしょうか。スポーツe:HEVは2リッターのNA(自然吸気)直噴エンジンですが、高い熱効率を広い回転域で実現しています。つまり、高効率のままエンジン回転数を自在に可変させることが可能なわけで、ホンダはそれを「楽しさ」のために活用しようと考えました。

 そこで生まれた制御が、走行状態に応じてエンジン回転数やモータートルクなどを高精度に制御する「ダイレクトアクセル」と、ドライバーの感覚とマッチした加速を実現させる「リニアシフトコントロール」です。

「e:HEV」の魅力をぐんと引き出す「S+Shift」も凄かった!

 さらにこの強みを最大限に活かし、走りの愉しさを高いレベルへと引き上げる制御が「Honda S+Shift(以下、S+シフト)」になります。

 この制御の核となるのが、進化した「ステップシフト制御」と「スポーツアダプティブ制御」の融合になります。加速時には、まるで熟練のドライバーが有段トランスミッションを操っているかのような、リズミカルなステップ変速を再現しますが、その秘密はアップシフトの瞬間にあります。

 発電用モーターを積極的に回生駆動させてエンジンに意図的な負荷(フリクション)をかけ、エンジン回転数を鋭く下降させると同時に、駆動用モーターの出力を一瞬だけ低下させています。

 この緻密な協調制御でDCTやMTさながらのリアルな変速Gとダイレクトなフィードバックをドライバーに伝えています。

「スポーツe:HEV」と「Honda S+Shift」を搭載するホンダ「シビック e:HEV RS」[マイナーチェンジモデル/2026年6月発売]
「スポーツe:HEV」と「Honda S+Shift」を搭載するホンダ「シビック e:HEV RS」[マイナーチェンジモデル/2026年6月発売]

 さらに減速時の制御にも徹底してこだわっています。一般的なHEVはアクセルOFFで即座にエンジンが停止するため、コーナー脱出時などの再加速で一瞬のタイムラグが生じ、「意のままの走り」を阻害しがちでした。

 しかしS+シフトは、ブレーキングや減速Gを感知すると、発電用モーターの回生量をコントロールしてエンジン回転数を鋭く跳ね上げる「ブリッピング」を演出。

 また走行状態に応じた高い回転数を維持する「シフトホールド」をシチュエーションに応じて実行します。これにより、コーナー立ち上がりなどの繊細なアクセルワークに対してもタイムラグは皆無となり、阿吽の呼吸で即座に強力なトルクを発揮する“臨戦態勢”を維持できるのです。

 これらの制御は、高度に連動する「ASC(アクティブ・サウンド・コントロール)」が奏でる心地よいエンジンサウンドとメーターディスプレイの動きと完全に同期。

 こうしたデジタル制御を高次元でシンクロさせることで、ドライバーの脳内に「最高に気持ちの良いパワーユニットを、いま自分で操っている」という至高のアナログ体験を可能にしています。

「スポーツe:HEV」と「Honda S+Shift」を搭載するホンダ「プレリュード」[2025年9月発売]
「スポーツe:HEV」と「Honda S+Shift」を搭載するホンダ「プレリュード」[2025年9月発売]

 また、モーター制御だからこそ生み出せる「拡張性」も強みの1つです。

「プレリュード」のS+シフトは、ドライブモードに応じてパワートレインの特性が「キャラ変」します。

 かつてのホンダのフラッグシップ「レジェンド」に搭載されたような、大排気量NAのような粘り強いトルク特性を見せる「コンフォート」、バランサーシャフト付きの「K20Aエンジン」を彷彿とさせる、精緻で洗練された高回転の伸びをみせる「GT」。

 そして常にパワーバンドをキープする「スポーツ」と、ガソリン車では物理的に共存し得ない複数の「エンジンの人格」を1台の中に宿し、シーンに応じて使い分ける楽しさを備えています。

 この「スポーツe:HEV」×「S+シフト」を水平展開し、専用の内外装と引き締まったフットワークを組み合わせたのが「シビック」のマイナーチェンジで設定された「e:HEV RS」です。

 このe:HEV RSは、従来のガソリン車に匹敵するスポーツ性を手に入れたことで、シビック「RS」の販売比率を3割から一気に7割近くへと跳ね上げています。

 これまで多くのメーカーが挑みながらも成し得なかった「乗るたびに心が昂るハイブリッドスポーツ」を、ホンダはスポーツe:HEV×S+シフトの組み合わせで可能にしたのです。

 個人的には、“ハイブリッド嫌い”のクルマ好きも納得できるハイブリッドと言っていいと思います。

 筆者はこれを、初代IMAからの苦闘、そして3つのスポーツハイブリッドでの手痛い反省と挑戦の歴史があったからこそ到達できたと思っています。

 時代がどれだけ電動化へとシフトし、厳しい環境規制の中でもホンダは「走る喜び」を忘れない。その姿勢と高度な技術力の融合こそが、新時代の「ホンダらしさ」なのかなと。

 このS+シフト、ホンダは「他の車種にも水平展開していく」と公言済みですが、次はどの車種なのでしょうか。

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