廃線の「線路跡」を“そのまま”走るバス!? 「一般車通行禁止」の“専用道”を爆走! 異例づくし&バスファン歓喜の珍・路線 JRバス関東「白棚線」とは? 〜果てなき路線バスの旅(番外編)〜
鉄道路線跡を活用したバス専用道を走る「白棚線」
JRバス関東は、関東地方を中心に福島県・長野県・愛知県などにもネットワークを持つJR東日本グループのバス会社です。
【画像】「すげえぇぇ!!」 これが異例づくしの「JRバス関東 白棚線」の全貌です! 画像で見る(30枚以上)
その支店のひとつである、同社の白河支店(福島県白河市)では、2024年から不定期でバスの運転体験会を実施しており、高い人気を集めています。
その理由は、2024年7月に廃止になった「白棚(はくほう)線のバス専用道」を、与えられた時刻表通りに、まるでバスの運転士のように運転できることが挙げられます。
ではこの専用道はどのようにして生まれ、どのような理由で廃止され、現在はどのようになっているのでしょうか。
JRバス関東の白棚線は、1957年に運行を開始したバス路線です。JR東北本線の白河駅からJR水郡線の磐城棚倉(いわきたなぐら)駅の間、および磐城棚倉駅から先の祖父岡(そぼおか)までを結ぶバス路線です。
しかし以前は、鉄道路線としての同名の白棚線が存在していました。白棚線は、東北本線の白河駅と水郡線の磐城棚倉(いわきたなぐら)駅間23.3kmを結ぶ白棚鉄道として、1916年に開業しました。
第二次世界大戦後の1941年には、鉄道省に買収されて国有化されたものの、政府によって、重要路線への資材供出もしくは金属供出を目的とした「不要不急線」の指定を受け、レールを撤去されてしまいました。
そして1944年には、全区間で運行を休止。その代わりはバスが受け持つことになったのです。

戦後に鉄道路線として復活する計画が立てられましたが、結果として断念され、代替のバス路線が1957年に開業しました。
ところが、他の鉄道路線が休止・廃止をバスに転換するのと異なり、白棚線では線路跡を舗装したバス専用道を走る路線という方法を採りました。
他にもバス専用道化された事例としては、未成線をバス路線に転用した阪本線、北陸本線の旧経路を支線化した柳ヶ瀬線などがあり、現在ではJR気仙沼線・大船渡線の被災区間、日立電鉄線の廃線跡、鹿島鉄道線の廃線跡、秋保電気鉄道の廃線跡などを活用したバス路線が運行されていますので、白棚線はその“先駆け”といえるかもしれません。
ところで白棚線のバス路線は、当初「白棚高速線」と称していたのです。
1957年当時、日本の舗装率はなんとたった7%で、国道でも舗装率が2割に満たない時代。
そのような中で、美しく舗装された「国鉄自動車専用道」と名付けられたバス専用道を走るバスは、まさに「高速」という名がふさわしい路線でした。実際に、鉄道路線時代よりも全区間で15分ほど早く着けるようになったそうです。
さらにバス専用道はカーブや坂の傾斜も緩かったこともあり、ハイウェイバスで用いる高速バスの試作車の試験が1950年代末頃から白棚高速線で行われ、いわゆる「国鉄専用型式」の高速バス完成に貢献しました。
ちなみに、現代の私たちが想像する「高速」である高速道路は、1963年に名神高速の栗東IC〜尼崎ICで初開通。そして、白棚線の試験を生かして開発された高速バスを用いた、東名高速の「東名ハイウェイバス」は1969年に開業しています。その際、白棚高速線は「白棚線」に改称され、現在に至っています。

白棚線に話を戻すと、1957年のバス路線開業当初は、おおむね旧線路跡のバス専用道で運行されていましたが、並走する国道289号の改良・整備や災害による路盤崩落、専用道の老朽化などを理由として一般道を通るように経路が変更され、バス専用道の廃止が少しずつ進行しました。
そして2024年7月には、表郷(おもてごう)庁舎前〜三森間のバス専用道が廃止されて国道289号ルートに変更されたことで、2026年6月現在におけるバス専用道は、関辺〜磐城金山間を残すのみとなっています。
バス専用道は国道から分岐して始まります。分岐点には信号はありません。JRバス関東の私有地であるバス専用道入口には、「車両通行止め(路線バス除く)」の標識が立ち、一般車のみならず歩行者・自転車の進入も禁止されています。
場所によっては、「国鉄高速度専用自動車道」と書かれた国鉄時代の看板の姿も見られます。
バス専用道は鉄道路線でいう「単線」のため、大型バスがすれ違うことができません。そのため専用道区間では、停留所などの幅を広げて対向バスの交換(行き違い)を行なっています。
白棚線では、かつて駅だった場所がそのまま停留所化されたケースも多いほか、鉄道路線時代の駅数に比べ、停留所は大幅に増やされて利便性も向上しています。
専用道での最高時速は60km/hで、実際にバスはそれに近い速度を出します。道路幅は約3.6mしかないので、狭く感じる道路を思いのほか豪快に走ることに驚かされます。
バス専用道とは一般道も数多く交差していますが、国道への合流地点などをのぞき、基本的にはバス専用道が優先。そのため一般道側に「とまれ」の標識・標示が行われています。もし現地をクルマで訪問した際は、やってくるバスに気をつけてください。
なお、JRバス関東によると、残ったバス専用道区間の存続について廃止などの予定はない、とのことですが、いつかは一般道経由に変更されてしまうかもしれません。
かつて鉄道路線だったバス専用道を快走する、という個性的なバス路線を、ぜひ訪ねてみてはいかがでしょうか。

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