マツダ車の「製造現場」どうなっている? 「デザインや走り“だけ”重視」ではない! 「ドアのスキマ」の精度まで追求!? 1台ずつに込められた「究極のコダワリ」を確かめた!
こだわりの「匠の技」を量産化ってどういうこと!?
マツダのクルマは、高いデザイン性や独自の考えに基づく走行性能などを追求した結果、ブランドとしてのアイデンティティを確立。そして、このこだわりが根強いファンを生むことになりました。
しかし、実はクルマの製造過程においても、品質へのこだわりが追求されています。
メディア向けに開催された「マツダ体験会」で、防府工場(山口県防府市)を見学し、そのこだわりを見てきました。
【画像】「ええぇぇ!」 これがマツダ「防府工場の内部」です!(30枚以上)
現在販売されているマツダ車の特徴を振り返ると、デザインと走行性能それぞれで明確なキャラクター付けがなされています。
デザインといえば、2010年に始まった「魂動デザイン」を思い浮かべることが多いでしょう。

2010年に披露されたコンセプトカー「靭(SHINARI)」で初採用された「魂動―Soul of Motion―」は、生き物のような生命感を表現し、緊張感と温かみをもたらしています。面構成もシンプルにし、無駄な線や造形を極力削ぎ落とすことで、光と影の動きを強調し、艶やかなフォルムを生み出しています。
市販車は主力SUV「CX-5」での採用を皮切りに、2017年にはフェイズ2へと深化させており、現在ではコンパクトカー「MAZDA2」から海外で販売する大型SUV「CX-90」まで、全車統一で魂動デザインが採用されています。
そしてこの魂動デザインを強調するものとして、「ソウルレッド」に代表される、職人の手吹きを再現した塗装技術「匠塗(TAKUMINURI)」もあります。代表色のソウルレッドは、今やマツダのテーマカラーになっており、魂動デザインと組み合わせ、他ブランドのクルマとは違った印象を与えています。
さらに、デザインだけでなく、走りにもコダワリがあるのがマツダ車の特徴です。それが、意のままに走るという「人馬一体」という考えです。
人馬一体の考えは、まず人間中心とした設計思想や、リラックスしたドライビングポジションの構築に始まり、エンジンやミッションなどを高効率化し俊敏な走りを実現する「SKYACTIV TECHNOLOGY」を組み合わせ、ドライバーが意図したとおりに走ることができる、というものです。
これにより、運転していて気持ちよさを感じられるだけでなく、コントロールしやすいことで安全にも役立ち、ひいては乗員全員が幸せになることも追求されています。
そうしたこだわりを評価し、マツダのクルマを愛用しつづけ、熱く支持する人も多くいます。
そして、ユーザーの元へ届けられる新車にも、魂動デザインや人馬一体を最大限感じられるよう、製造過程でさまざまなこだわりが取り入れられています。
今回、その様子をマツダの防府工場で見学することができました。
防府工場には第一(H1)と第二(H2)の2つの工場があり、第一工場で生産される車種は「MAZDA2」「MAZDA3」「CX-30」などの小型車、第二工場は「CX-60」「CX-70」「CX-80」「CX-90」などのSUVの「ラージ商品群」を担当します。
今回見学したのはこのうちの第二工場で、マツダが注力しているラージ商品群の生産の様子でした。
ラージ商品群はガソリンやディーゼルエンジンを搭載する内燃機関車のほかに、マイルドハイブリッドや、PHEV(プラグインハイブリッド)モデルもありますが、ライン(生産ライン)の改修を行ったことで、同じライン上で多様な車種を生産できる「混流生産」を実現しています。
最新鋭の工場であるため、例えば外板のプレスや溶接、塗装といった工程では自動化されたロボットが行っていますが、このロボットの動きに工場の熟練工“匠”の作業を反映しているから驚きです。

特に防府工場では、ラージ商品群のラインを設ける第二工場のリニューアル時に「匠の技をすべてのお客様へ」というキーワードのもと、人馬一体や魂動デザインの質を高めるよう、技術を深化させています。
例えば、人馬一体を際立たせるために、ホイールのアライメント(取付角度や位置などのこと)を調整する高精度なテスターの導入や、車高の誤差を抑えるコイルスプリング選択システムを導入。
エンジンやミッションといったパワートレインの搭載も、重心をぴったりと合わせ、振動を低減するような治具(正しい位置決めを行う補助工具)の導入などを行っています。
ボディ自体も、振動やノイズの低減につながる「減衰ボンド」(構造用接着剤を用いた「減衰ウェルドボンド接合」)の塗布を増やすだけでなく、カメラでリアルタイムに計測しながら、その塗布量を管理しています。
そして何より驚くのが、ドアの取り付けです。ボディの抑揚を決めるキャラクターラインが存在しないという魂動デザインは非常に繊細で、少しの取り付け誤差などが粗として目立ってしまいます。
しかしボディには製造過程上発生するわずかな誤差があり、すべて同じ位置で取り付けると、1台ずつ取り付け位置が異なってきます。そこで、ドアと車体のスキマを調整することで美しいサイドビューを実現します。
ただし、スキマを少なくすればいいというわけではないといいます。組み付け担当者の話では「スキマがなさすぎると、ドア開閉時に車体や別のドアを衝突しそうと感じ、違和感を覚える」と話しており、絶妙な位置決めがキーになるといいます。
これまではドアの取り付けに関しては、機械で取り付けられたものを匠の技で手作業により微調整していたそうですが、現在はロボットが作業を行っています。
ラインで流れてきた車体を1台ずつ計測し、そのデータを元に取り付け位置を決定。取り付け時に多少のズレがあれば、一度接合部を緩めて再度調整している様子も見ることができました。まさに「匠の技の量産化」を実現しています。
防府第二工場では、時間当たりの生産台数を示す値が「38.5JPH」、つまり「1.56分に1台」という能力を持ちます。そうした大量生産を行うなか、微細な組み付け精度の追求も両立していることは、エンドユーザーにとって、他メーカーにはない大きな魅力といえそうです。
工場長・スタッフの「推しポイント」はどこ?
見た目だけでなく、“中身”の作り込みまで丁寧に行っているマツダ車ですが、防府工場のスタッフに、マツダ車の「推しポイント」とそれを実現するために工場で心がけていることについて、聞いてみました。
マツダ防府工場 松田義博 工場長は、以下のように話します。
「私のマイカーはCX-60のマイルドハイブリッド車で、なかでも良いと思うのは、高剛性ボディが生む足回りです。
硬いと言われるお客様もいらっしゃるのですが、本当に意のままに動いてくれていると感じます。CX-60の前はCX-5に乗っていたのですが、世代が新しくなるごとに実感できています。
それを成り立たせるための組み付け技術として、エンジン搭載や車両動作の特性に効いてくる組み付けの工程をラインでは非常にこだわっていて、それが走りに反映できていると思います」
大量生産と高精度の組み付けは相反するものですが、それを見事に両立することで、意のままに動く=人馬一体を実現。松田工場長も「自画自賛です」としつつも、他にはない推しポイントだといいます。

続いて、第4車両製造部 車体課 マネージャーの深谷英彦さんはこのように語ります。
「外観です。これは他のメーカーの方と話していて聞いたのですが、『マツダさんのクルマって、信号待ちで隣に止まっていると、雰囲気がある。オーラがある』という風におっしゃるんです。
車体の部品は積み木のようにひとつずつ作るのですが、その一個一個を見て、組み合わせたものがどれくらい(の完成度)になるかを計算してやっているから、クルマ全体の雰囲気につながっていると思います。
もうひとつが、溶接の大きさです。他メーカーよりも溶接の面積を大きくしており、ボディ全体の強度がある、剛性があるということにつながります」
ユーザーの手元にわたったマツダ車は他メーカーからも羨望の声があるようで、マツダ車に乗る人にとっては自慢ポイントなのかもしれません。そして、この自慢ポイントを実現しているのが、工場での組み付けのこだわりなのです。

最後に、第4車両製造部 第2組立課 アシスタントマネージャーの西村宙さんはこう話します。
「ボディにはラベルやオーナメントが装備されていますが、作業者の方のこだわりとして、取り付けの角度までこだわっているんです。
作業者の方自身が治具を作って、誰がやっても決められた角度でラベルやオーナメントが貼れるように、ひとつずつこだわりを持って作業をしています」
ボディのエンブレムなどの装着は、最後の仕上げに近い部分です。ここは手作業で行われていますが、どうしてもクルマによっては多少の誤差が生じる部分です。
しかし、作業を行うスタッフ一人ひとりがこだわりを持つことで、魂動デザインを崩さない、ベストな位置になるように装着作業を行っているようです。マツダ車を持つ人は、自身のクルマを改めてチェックしてみてはいかがでしょうか。

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デザインや走りなどに独自の価値観を持つマツダ車ですが、クルマを購入したユーザーに対し、その価値をいかに崩さないかに注力し、こだわりをもって生産されていることがわかります。
一般的にクルマは約2〜3万個という部品で構成されていますが、その一つ一つにこだわっているからこそ、マツダ独自のデザインや走りを持つクルマが完成していることがうかがえました。

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