トヨタが「水素製造システム」の完成を発表! 自動車技術とプラント知見を融合 ホンダは「次世代FCモジュール」、ヒョンデは「新型ネッソ」で水素技術アピール
トヨタと千代田化工が「5MW水電解システム」の完成を発表! 自動車技術で水素製造を効率化
2026年3月17日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開幕した「第25回 H2 & FC EXPO 【春】(水素・燃料電池展)」。
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ここでは、水素関連の企業が様々出展していましたが、その中には自動車メーカーからトヨタ・ホンダ・ヒョンデの姿もありました。一体どのような展示だったのでしょうか。
まずトヨタは、千代田化工建設(以下、千代田化工)は「5MW水電解システム」の完成を発表しました。
この取り組みは、工業製品の製造に長けたトヨタとプラント建設を専門とする千代田化工の強みを組み合わせたプロジェクトです。
プレゼンテーションの冒頭、トヨタ 水素ファクトリーの濱村芳彦チーフプロジェクトリーダーは、「もっと水素を使おうよというシンプルなメッセージから始めさせていただきたい」と切り出し、水素を身近なエネルギーとして利用できる社会の構築に向けた姿勢を示しました。

両社による協業は、2023年春に開始されたデンソー福島での実証実験が原点です。当時のシステムは0.4MWの電解容量で、水素製造量は1時間あたり8kgでした。
今回発表されたトヨタ本社工場における「5MW水電解システム」では、自動車用部品や生産設備を共通化することで、デンソー福島と同等となる750平方mの敷地面積のまま、電解容量5.0MW、水素製造量96kg/hを実現。これにより、同じ体積の電解槽で12倍の水素製造が可能となりました。
また、この設備は今後、同敷地内で合計10メガワットまで拡張できる計画になっており、その時にはデンソー福島の24倍の水素製造量を実現できるといいます。
システム構築における両社の連携について濱村氏は、「トヨタの量産解析技術と千代田さんのエンジニアリング事業最適化の力が組み合わさって初めて“本当に使える水素”が動き始めた」と述べています。
今回の装置では、セルスタックをカートリッジ形式で構成。そのため、メンテナンスが容易で、現場でも素早く交換することが可能になりました。
千代田化工 顧問・社長補佐の松岡憲正氏は「使いながら育てられる装置にしていくために、こうした構造にもこだわっています」と話します。
また、ハード面のみならず運転支援の取り組みも実施。トヨタが開発したセルスタック劣化解析プログラムと、千代田化工のプラント制御のノウハウおよび予知保全・予防保全の知見、各種シミュレーションを掛け合わせた運転支援システムの実証も進められます。
本システムの導入により、オペレーションに関わるコストを10%以上削減するとともに、部品交換やメンテナンスにおけるダウンタイムを半減。
さらに、装置の運転、稼働状況をデータとして、AIに機械学習させており、水素需要量の変動、あるいは再生可能エネルギー等の供給側の変動、さらに電力価格の変動に対しても、経済性を考慮した最適な運転制御を可能にし、事業者の水素製造収益を最大化していくとしています。
製造された水素は、トヨタ本社工場内において具体的な用途で活用されます。
自動車部品や燃料電池の生産工程での利用に加え、工場内の構内輸送を担う車両の燃料、および研究開発部門向けにも使われる予定です。
部品の共通化や生産設備の共用化を進めることで、小型かつ高密度で導入しやすいシステム設計としました。
スタックの交換時間をこれまでの半減に抑え、遠隔での運転監視を可能にするなど、設備の利便性も向上しています。
5MW水電解システムの運転は来週以降に開始する予定です。
その後、5月上旬以降に、自動車部品生産や燃料電池生産、フォークリフトなど構内輸送への供給開始が見込まれています。
両社の開発計画は、より大規模な実用化へと移行しています。
2030年に向けて、愛知製鋼の知多工場向けに15MW級の水電解設備を導入するプロジェクトも始動。本計画は、前年に水素社会推進法に基づく認定を受けています。
このプロジェクトでは、ユーラスエナジーが風力発電によって生み出した再生可能エネルギー由来の電力を利用して水素を製造します。
製造された水素は年間1600tの規模でパイプ供給され、製鋼加熱炉の燃料として利用される予定です。
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今後も両社は日本の成長戦略に貢献し、水素を日常的に利用できる社会の実現を目指して技術開発を継続していきます。
世界情勢の不安定化によりエネルギーの供給にも影響が出つつある今、濱村氏は「取る燃料ではなく、作ることができるという点が既存燃料の一番大きな差」と水素の利点を挙げ、「エネルギーに関する変動要素というのはこれからもあると思いますので、そういった危機の中でも安定して使っていただけるような燃料になることが、我々の願いです」と語りました。
ヒョンデはFCEV「ネッソ」を展示! 初の公道試乗も
H2&FC EXPO初出展となったヒョンデのブースでは、約30年にわたる水素技術開発の歴史とヘリテージが紹介されました。
ヒョンデの水素への挑戦は、1998年に端を発します。「マーキュリー・プロジェクト」という、太陽に最も近い惑星の名を冠した野心的なプロジェクトからその歩みは始まりました。
2000年にはNASAに燃料電池システムを納入していたUTC Power社とパートナーシップを締結し、本格的な共同開発に着手。
2004年には、燃料電池の心臓部である「スタック」の独自開発に向けた「ポラリス・プロジェクト」を始動させました。
韓国とアメリカを往復しながら数百枚のグラファイトセパレーターを積み重ねる試行錯誤を経て、ついにスタックの独自開発に成功。この技術的な自立が、後の量産化への大きな転換点となりました。
2010年代に入り、世界的な金融危機の影響で水素への関心が一時的に低下する時期もありましたが、ヒョンデは粘り強く研究を継続。
量産に適した金属セパレーターでのスタック再設計を成し遂げ、2013年には世界初の量産水素電気自動車である「Tucson ix Fuel Cell」を世に送り出しました。
2018年には、水素電気自動車専用モデルとしてミドルサイズSUVの「NEXO(ネッソ)」(初代)を発売。
乗用FCEVとして累計販売台数世界1位を達成し、燃料電池システムの海外輸出を本格化させるなど、水素エネルギー普及のリーディングカンパニーとしての地位を確立しました。

そして2024年、ヒョンデは水素バリューチェーン全体を担うビジネスブランド「HTWO」を立ち上げ。
HTWOは、単なる車両開発の枠を超え、水素の製造、貯蔵、輸送、そして利用に至るまでのバリューチェーン全体を網羅する総合ソリューションを提供しています。
モビリティ分野においては、すでに3000台以上の累計供給実績を持つ水素燃料電池バス「ELEC CITY」や「UNIVERSE」、さらには世界初の量産型大型トラック「XCIENT」など、商用車の社会実装を加速させています。
さらに、これらの活動を支える中核技術である「燃料電池システム」も多角化しています。
乗用車や商用車向けの「エンジン型」に加え、トラムなどの設置スペースに制約があるモビリティに適した「フラット型」、そしてフォークリフトや港湾設備などの電動化を支える「水素燃料電池パワーパック」など、用途に応じたラインアップを拡充しています。
これらを通じてHTWOは、モビリティ、発電、産業用機器など、あらゆる分野で水素エネルギーが活用される未来の実現に向けて、着実な歩みを進めています。
HTWOを立ち上げた2024年には、未来の水素社会を示すコンセプトカー「INITIUM(イ二シウム)」も発表。
その信念は2025年4月、韓国で公開された新型「ネッソ」へと結実します。
約5分の充填で最大1014kmの走行距離を実現し、V2L/V2Hといった給電機能も備えたこの最新モデルは、30年にわたるヒョンデの水素ヘリテージの「結晶」として、新たなモビリティ時代の幕開けを象徴しています。
今回はそのネッソが展示され、日本初の公道試乗会も開催されました。
さらに、ブースには「水素自動充填ロボット」も登場。時折ネッソに充填するデモを披露しながら、来場者の注目を集めていました。
このロボットは、高度化されたビジョンAI技術により車両情報を識別し、充填口の位置・角度を認識して全自動で充填サービスを行うもの。
日本での展開は未定ながら、韓国では販売に向けて実証実験が進められているそうです。
ホンダ「次世代燃料電池モジュール」の現在地とは
ホンダは水素事業の核となる「次世代燃料電池モジュール」の実機サンプルを初公開しました。
同社は、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた重要課題として「開発投資・時間の適正化」「初期投資・運用コストの抑制」「水素の安定供給」を掲げており、その解決策として燃料電池技術の進化とバリューチェーンの拡大を加速させています。
ホンダの燃料電池開発は1998年のプロトタイプ発表から30年近い歴史を持ち、これまで「FCXクラリティ」や「CR-V e:FCEV」といった乗用車を通じて技術を磨いてきました。
現在はその知見を活かし、乗用車だけでなく、商用車、建設機械、さらには定置電源といった多用途への展開を広げています。
例えば商用車分野では、日本でのいすゞとの共同実証や、アメリカ、中国での中大型トラックへの適用確認を並行して進めており、カーボンニュートラル化が困難とされる大型モビリティの電動化に貢献しようとしています。

今回、展示の目玉となった「次世代燃料電池モジュール」は、現行の「CR-V e:FCEV」搭載モジュールと比較して、圧倒的なスペック向上を果たしているのが特徴です。
開発目標として、コストを2分の1以下に抑制しつつ、耐久性は2倍以上に向上、さらに容積出力密度は3倍以上という飛躍的な進化を目指しています。
2025年に公開されたのはモックアップでしたが、今回は実際にテストで使用している部品・デバイスを含む実機モジュールとして披露されました。
GMとの共同開発であった第2世代までの知見をベースにしつつ、この第3世代(次世代)はホンダ独自の技術を核として開発されています。
スタックのサイズ最適化やデバイスの組み合わせを厳選することで、競合他社と比較しても高い優位性を持つコンパクトな形状を実現しました。
開発担当者によれば、「現在は2027年から2028年の量産開始に向けたロードマップに沿って開発が進んでおり、今後は多様なユーザーからのフィードバックを反映させながら、完成度を高めていく」とのことです。

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