まるでスイフト!? スズキの新型“軽ワゴン”「e SKY」公開! 約1000kgの“軽量ボディ”とフットワークの完成度に注目! 新たなBEVプロトタイプの走りを試す
”軽自動車のエキスパート”が作るBEVとは?
グローバル視点で見れば、日本のBEVの普及ペースは依然としてスローペースです。しかし、筆者(山本シンヤ)はその潮目を大きく変え、普及を一気に加速させる原動力となるのは「軽自動車」だと思っています。
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日本特有の軽自動車カテゴリーは、今や新車販売台数において高いシェア(約35~40%)を誇る一大市場です。さらに、地方部では「1世帯で複数台を所有するセカンドカー需要」が多く、日々の用途は「1日あたりの走行距離は少なめ(買い物や通勤・送り迎えなど)」という使い方が中心となります。
大容量バッテリーや長距離急速充電を前提としない軽BEVだからこそ、「自宅充電で毎日満タン」「ガソリンスタンドに行く手間からの解放」「街乗りでの圧倒的な静粛性と経済性」といったBEV本来のメリットがより活きてきます。
そんな中、昨年のジャパンモビリティショー2025で公開された「VISON e SKY(ビジョン イースカイ)」の量産モデルとなる「e SKY(イースカイ)」の情報が公開されました。
近年の軽BEV市場では他社が先行するなか、スズキは自社が長年培ってきた軽自動車づくりの哲学を前面に打ち出した初となる軽乗用BEVになります。
チーフエンジニアの津幡知幸氏によると、開発コンセプトは「EASY to SWITCH(いつもの軽から、無理なくBEVへ)」です。「BEVである前に、まず軽自動車である」という強い思想のもと、ユーザーがこれまでの生活スタイルを変えることなく、日常の足として自然に乗り換えられるクルマを目指して開発されています。
つまり、スズキ伝統の「小・少・軽・短・美(小さく、少なく、軽く、短く、美しく)」のアプローチはBEVでも不変で、「バッテリーを大きくして遠くまで走らせる」のではなく、「クルマ全体の効率を極限まで高めて長航続距離を実現」という、まさにスズキらしいBEVとなっています。
後ろ下がりのショルダーラインは“あのクルマ”のオマージュ!

エクステリアは「ワゴンR」のようなセミトールスタイルと、「アルト」のような親しみやすさを融合したシンプル&クリーンなデザインが特徴で、フローティングルーフや高いショルダーラインにより軽快感と安心感を表現しています。
ちなみに、後ろ下がりのショルダーラインは「スズライト」(スズキ初の量産軽自動車)のオマージュですが、デジタル数字をモチーフにした前後シグネチャーランプ、特徴的形状のアルミホイールなど、伝統と革新が上手に盛り込まれています。ちなみに実車は質感が高いものの、写真映りがイマイチ(抑揚がないように見える)で損をしているように感じました。
ボディカラーは豊富に用意されていますが、メインカラーは新開発の「イマージョンブルー」。光の当たり方で紫がかった表情へ変化する質感の高い塗料です。
インテリアはエクステア同様にシンプルクリーンなデザインです。コックピットは国内スズキ初となる10.1インチの大画面ディスプレイ、フルデジタルメーターなど先進性を感じさせますが、シフトレバーを含めた操作系はオーソドックです。
加えて、陶器のトレーをイメージしたインパネ造形や、カラーミックス樹脂、ニトリのソファを思わせるざっくりとした素材のシートなど、温かみのある空間となっています。

居住性はスーパーハイト系と比べると頭上空間は劣りますが、個人的にはちょうどいい“間”があると感じるサイズ感です。後席の足元スぺ―スは十分以上の広さ。ただ、フロアが若干高めなので、ヒール段差は体型によって気になる人が出るかもしれません。
装備面は充実(グレード展開は未発表ですが、今回のモデルは恐らく上級グレードと予想)、目的地の残量と交通状況を考慮する「つながるナビ」や、シフト操作を音声で案内して誤操作を防ぐ運転サポート機能を搭載。冬場の電費悪化を防ぐダイレクトヒートポンプエアコンも備えています。
「少ない電気でたくさん走る」一充電走行距離は310km
メカニズムはどうでしょうか。パワーユニットはモーター、インバーター、減速機を一体化した小型・軽量な3-in-1構造のeAxleを搭載。スズキが得意とするコンパクト設計により、フロントのパワートレインルームを最小化、室内空間の拡大と取り回し性能の向上に貢献しています。
バッテリーは26kWhのリン酸鉄リチウムイオン電池です(数値はすべてプロトタイプ参考値、以下同)。
プラットフォーム軽BEV専用に新開発された「e-HEARTECT」を採用。薄型バッテリーパックを床下に効率よく配置することで高剛性と低重心地化を両立し、軽自動車の限られたスペースを最大限に活かしたパッケージングを実現しています。

また、足回りのレイアウト最適化によりフロントタイヤの切れ角を大きく確保。最小回転半径はガソリン車と同等以上の4.4mを誇ります。
気になる車両重量は重いバッテリーを搭載しながら1030kg。車両全体の空気抵抗低減(アンダーカバーやボディ形状の細部までの作り込み)と軽量化により、「少ない電気でたくさん走る」を実現しており、交流電力量消費率は国産BEV最小となる97Wh/km。その結果、一充電走行距離は日常使い+αを十分にカバーできる310kmを実現しています。
プロトタイプに試乗! “乗り味”はスズキの軽自動車最良
今回、正式発表に先駆けてプロトタイプを袖ヶ浦フォレストレースウェイ(千葉県)で試乗してきました。クローズドコース(コースにはパイロンスラロームとクランクを設定)ですが、日常+αくらいのペースで走らせています。
アクセルを踏み込むと、応答や瞬時に立ち上がるトルクは感じるものの、いい意味で“普通”です。聞くと「そっと踏めば優しく、グッと踏めば力強い」「ガソリン車から乗り換えても違和感ないように」といった制御を行なっていると言います。
イメージ的にはトルクの谷間がないライトプレッシャーターボに近い感覚です。過度なトルク感や過剰な 音空間(無響室のような不気味な静けさ)を避け、必要な速度感や音を残した絶妙な静粛性と加速マナーは誰が乗ってもすぐに馴染める「乗りやすさ」があります。

予想を超えていたのは、フットワークの完成度の高さです。BEV用に開発された「e-HEARTECT」と高剛性ボディにより、1625mmの全高ながらもコーナリング中のロール感は驚くほど自然です。パイロンスラロームでもフリクションのないEPSも相まってスムーズなステアリング応答を示し、「腰高感」はほとんどありません。
車両重量は26kWhのバッテリーを搭載しつつも1030kgに抑えられていますが、軽さを活かしたキビキビしたフットワークと、格上モデルも顔負けのドッシリ感ある接地性が共存しており、予想以上に骨太な印象です。個人的には操舵した時のクルマの動きやロール感、更にはコーナリングの一連の流れは「まるでスイフトに乗っているかのような錯覚を覚える」ほどでした。
せっかくなので常用域を超えたハイスピードコーナリングも試してみましたが、タイヤ(165/65R14、燃費や転がりを重視)を限界まで使い切れるシャシー性能が与えられています。
ちなみにコースにはクランクのような条件も設定されていましたが、最小回転半径4.4mとフロントタイヤの切れ角が非常に大きく、「まだハンドルが切れるのか」と驚くほどの小回り性能を持っています。
乗り心地は路面状況の良いサーキットなので断言はできませんが、サーキット内の縁石やいくつかの凹凸を乗り越えても、突き上げを優しくいなしてくれます。この辺りは基本素性の良いシャシーとダンパーの味付けの良さの相乗効果でしょう。“乗り味”と言う意味ではスズキの軽自動車最良といっていい仕上がりです。
ブレーキペダルは内燃車よりも踏力コントロールがしやすく、回生ブレーキとの協調も滑らか。インパネ右下のスイッチでワンペダル走行が可能な「イージードライブペダル」に切り替えることもできます。加減速のコントロールが容易なのは言わずもがなですが、アクセルOFFで減速感はシッカリありつつも頭がゆざぶられるような感覚は少ない。電動車感を味わいたいならON、内燃車と同じ感覚が良いならOFFがいいでしょう。
Hotモデルの登場も期待したくなるほどしっかりした“走りの土台”
総じて言うとe SKYは「極めてプラティカルなBEV」です。中国メーカーなどをはじめとする新興勢力が豪華な素材や大容量バッテリーを組み合わせてBEVを作るのに対し、スズキは長年軽自動車を作ってきたエキスパートとして、最後の一滴まで魂を込める「すり合わせ」と「軽量化」で勝負を挑んでいます。そういう意味では、良くも悪くも“力技”で挑んできたBYD「ラッコ」とは対照的です。
もちろん「スライドドアではない」「先進性が薄い」と言う声も出ることでしょう。しかし、「気負いなくBEVを体験できる」モデルと考えたら一つの正解なのかもしれません。個人的には控えめながらも初代アルト、初代ワゴンRのように「軽を変える」と言う“志”や“想い”がギュッと込められたモデルだと感じました。
そして、実際に走らせてみて強く感じたのは、「素性の良さ」と「ポテンシャルの高さ」です。これほどしっかりとした走りの土台があるのなら、単なる日常の足だけに留めておくのは正直もったいない。
例えば、前後トレッドを広げてワイドフェンダーを纏い、足回りを引き締めて出力を引き上げた「e SKYワークス」もしくは「スーパーe SKY」のようなHotモデルの登場を、思わず妄想、期待したくなってしまったほどです(どこかのメーカーに似たようなモデルがありますが…)。

かつて規格や装備の均一化によって「コモディティ化」が懸念されていた軽自動車市場ですが、電動化という新たなフェーズを迎えた今、軽BEVや最新電動車を見ると各社のらしさがより一層際立っています。
軽BEVとして圧倒的な軽量化と「クルマとしての走り」を愚直に追求するスズキ、ワクワクさせる走りのホンダ(「N-ONE e:」等)、自社技術のフルHEV(e-SMART)で独自の答えを提示するダイハツ(近日発売予定と噂されている)、そしてBYDといった強力な海外勢まで出揃いました。
つまり、電動化により軽自動車はこれまで以上に刺激的で面白い時代に突入しています。スズキが満を持して送り出すe SKYもまた、その未来を力強く牽引する注目の1台であり、今後の軽自動車市場の展開から目が離せそうにありません。

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