2026.07.03
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ミシュラン「プライマシー5エナジー」「パイロットスポーツ5エナジー」に試乗!「energy」が付くと何が変わる?

コンフォートやスポーツ性能はエコ性能と両立するのか

 ミシュランの生業(なりわい)は「タイヤを売ること」ですが、彼らが目指すのは「たくさん売る」ことではなく、なるべく少ないタイヤで済むようなビジネスを構築することです。その証拠に、同社は2050年までに100%持続可能なタイヤを製造すると公言しています。

【写真】単なるエコタイヤじゃない! プライマシー5エナジーとパイロットスポーツ5エナジーの実力(36枚)(30枚以上)

栃木市のGKNプルービンググラウンドで、「プライマシー5エナジー」「パイロットスポーツ5エナジー」の性能を試した
栃木市のGKNプルービンググラウンドで、「プライマシー5エナジー」「パイロットスポーツ5エナジー」の性能を試した

 その実現のために、原材料の調達から製造、タイヤ使用後に至るまでのライフサイクル全体で環境負荷の低減に取り組んでいますが、その1つが“低転がり抵抗”タイヤです。その歴史は古く、1995年に「グリーンタイヤ(エナジーMXT)」を発売して以来、30年以上にわたって進化させてきました。

 しかし、より厳しくなる環境規制に対応するためには、ブランド全体で環境負荷のレベルを下げていく必要があるということです。さらに自動車メーカーからは「スポーツカーや高級車であっても燃費や航続距離に貢献できるタイヤを作ってほしい」という強いニーズが寄せられていました。

 そこでミシュランは従来の「エナジー」シリーズのようなエコタイヤの枠を超え、セグメント横断で環境性能(転がり抵抗や耐摩耗性)を向上させる必要があると考えました。そこで誕生したのが、今回紹介する「プライマシー5エナジー」と「パイロットスポーツ5エナジー」です。「コンフォートなのにエコ」「スポーツなのにエコ」という、二律背反する性能が本当に両立できるのでしょうか。

 その実力を確かめるために、栃木県栃木市の「GKNプルービンググラウンド」で、日常域から非日常域までテストしてきました。

 まずはプライマシー5エナジーです。プライマシーはプレミアムコンフォートタイヤに属しますが、その中でも環境性能を高めた「eプライマシー」の後継モデルとなります。現在は「プライマシー5」と併売ですが、ネーミングからも分かるように、将来的にはプライマシー5がこれに全て置き換わると予想されます。

 その特徴は、優れた燃費性能に耐摩耗性、ウエット性能を兼ね備えたものですが、その実現のために「エナジーパッシブ2.0コンパウンド」「スリムベルト」「マックスタッチ・コンストラクション」「ピアノアコースティックテクノロジー」「サイレント・リブテクノロジー」をはじめとする最新技術を惜しげもなく投入。結果、低燃費性能はタイヤラベリング制度で最高グレードとなる「AAA」、ウエットブレーキ性能はeプライマシー比で4.5%向上(ウエットグレード:b/c)となっています。

「コンフォート」と「エコ」の性能を高次元で両立

 試乗車はトヨタ「プリウス」で、ドライハンドリングは19インチ仕様です。走り始めのひと転がり目から抵抗感なくスッと動く感覚があり、転がりの良さはエコタイヤそのもの。純正タイヤよりもEV走行時の粘りが強く、EV走行の頻度が増すのを確信できました。

 それでいて快適性はプレミアムコンフォートのそれであり、走行中の「コー」「ゴー」というロードノイズが確実に抑えられており、静かすぎて相対的にエンジン音がうるさく感じられるほど。路面からの入力のいなし方も極めて柔らかく、19インチながらまるでインチダウンして偏平率を落としたしなやかさがあり、突起を乗り越える際のインパクトノイズもそれほど響きませんでした。

 ハンドリングは、ステアリングを切り込んだ時の応答性の良さは言わずもがなです。スッキリとした確かな手応えは、プレミアムコンフォートを超えスポーツタイヤの領域に入っています。操舵(そうだ)すると、機敏というよりはまるで薄皮を1~2枚剥いだかのようなダイレクト感が増した印象で、フロントからリアへの力の伝達の早さ、ギュッと路面をつかむグリップ感も相まって、ハンドリングの精度と正確さが増しています。

現行型プリウスに「プライマシー5エナジー」を装着。ハンドリング路では195/50R19サイズを、ウエットブレーキ路では195/60R17サイズの2種類をテストした
現行型プリウスに「プライマシー5エナジー」を装着。ハンドリング路では195/50R19サイズを、ウエットブレーキ路では195/60R17サイズの2種類をテストした

 その結果、いつも通りの運転でもクルマはより滑らか、より素直に動いてくれるので、まるで運転がうまくなったかのような錯覚を覚えます。これは運転席だけでなく後席でも分かるレベルで、クルマ酔い防止にも効くはず。その意味では、「純正よりも純正らしいタイヤ」ではないでしょうか。

 ウエットブレーキは80km/hからのフルブレーキングでチェックしました。試乗車はプリウス、タイヤサイズは17インチです。

 第一印象は「転がり抵抗AAAを達成しながら、これほど止まるのか」というもの。さらにエコタイヤとは思えないネットリとした確実なウエットグリップで、急制動時でもタイヤ自体の高いキャパシティーの余裕と、確かな安心・安定感を強く実感しました。絶対的な制動Gはもちろん、ブレーキを踏んだ瞬間から遅れなくGが立ち上がるので、「止まれるかも?」ではなく「止まれる!」と直感できる安心感も頼もしいです。

 今回はすり減った状態(残り溝2mm)でのテストも行いましたが、新品と比べ約2割の性能低下にとどまっており、「最後まで性能が持続」の主張にうそ偽りはありません。

スポーツとエコの両立?「パイロットスポーツ5エナジー」の実力は?

 続いてパイロットスポーツ5エナジーです。パイロットスポーツはスポーツタイヤでありながら他の性能もバランスさせ、トータルパフォーマンスに優れます。パイロットスポーツ4以降は国産スポーツタイヤのような直感的なグリップ力とスポーツタイヤらしからぬ転がりの良さが特徴でした。

 今回の進化は走りの楽しさを一切損なうことなく、さらに環境への貢献度を高めています。その意味では、パイロットスポーツEVの後継といえるでしょう。

「パイロットスポーツ5エナジー」を履いたトヨタ「bZ4X」。同じコースで「パイロットスポーツ4 SUV」と比較試乗(タイヤサイズはいずれも235/50R20)
「パイロットスポーツ5エナジー」を履いたトヨタ「bZ4X」。同じコースで「パイロットスポーツ4 SUV」と比較試乗(タイヤサイズはいずれも235/50R20)

 パイロットスポーツ5エナジーの特徴は、ハンドリング性能に加えて燃費性能、耐摩耗性、そしてウエット性能を向上させてある点です。その実現のために「バイ・コンパウンド・テクノロジー」「スリムベルト」「ダイナミック・レスポンス・テクノロジー」「マックスタッチ・コンストラクション」「ピアノアコースティックテクノロジー」をはじめとする最新技術を惜しげもなく投入。その結果、低燃費性能はスポーツタイヤながらもタイヤラベリング制度で「AAA/AA」、ウエットブレーキ性能はパイロットスポーツEV比で3.3%向上(ウエットグレード:b)となっています。

 試乗車は大幅改良されたトヨタ「bZ4X」です。発進時の軽さや転がりの良さに加えて、40〜60km/h付近の常用域でのロードノイズの小ささにはスポーツタイヤを感じさせる要素は少なく、思わず「君はプライマシーなのか?」とつぶやいてしまったほど。しかし、ひとたび旋回に入り横Gがかかると乗り味は一変しました。ただ、その切り替えは非常に自然でシームレスです。

 操舵(そうだ)と同時にスッとノーズが入る回頭性の良さ、さらに荷重をかけてかじを入れていく際の手応え、粘り気のある力強いグリップ感などはスポーツタイヤのそれであり、あのbZ4Xが小さく軽くなったかのようにキビキビと向きを変えてくれました。印象的なのはフロントからリアへの力の伝達の早さで、即座に旋回姿勢に入れるため、より少ない舵角(だかく)で曲がれました。

 運動性能は高いもののタイヤの限界が高いので、bZ4Xだとサスペンションやシートのホールド性が負けてしまうオーバースペックな感覚に陥りました。

どのタイヤでも感じるミシュランのタイヤづくりの「哲学」

 ウエット性能については、ハンドリングコースで「パイロットスポーツ4 SUV」との比較試乗です。エコ性能を極めたタイヤは一般的にウエットグリップが厳しいのですが、パイロットスポーツ5エナジーはパイロットスポーツ4 SUVと同等、あるいはそれ以上にネットリと路面に張り付く高いグリップ性能です。

最新EV車両との高い相性の良さを実感できた「パイロットスポーツ5エナジー」
最新EV車両との高い相性の良さを実感できた「パイロットスポーツ5エナジー」

 特に旋回状態からアクセルを深く踏み込んで加速していくような状況でも、横Gから縦の駆動へとつながるトラクションの伝達が極めてスムーズであり、雨の日でも「走る楽しさ」を全く妥協していない圧倒的なウエット性能を証明してくれました。

 ただ重箱の隅を突くと、「グリップ限界ギリギリの領域は、パイロットスポーツ4 SUVのほうがわずかに粘り強いかな」と感じました。このあたりについて開発者に確認すると、「センター部はモータースポーツ由来のコンパウンドに対して、ショルダー部はエネルギー効率の良いコンパウンドを採用しているため」と教えてくれました。ただ、日常域ではそれほど気にするレベルではないのでご心配なく。

 結論をいうと、プライマシー5エナジーはコンフォートタイヤでありながらスポーツタイヤのようなダイレクト感と高精度なハンドリングを得られ、逆にパイロットスポーツ5エナジーは鋭い運動性能を持ちながら優しい乗り心地と静粛性が備えられていました。

 ちなみに両者を乗り比べると、キャラクターに見合った個性を感じる一方で、「過度なところがない」「連続性がある」といった基本の特性は共通しています。それはなぜか――ミシュランのタイヤづくりの“哲学”が共通しているからです。

ミシュランが目指す「サステナブル」な未来

 ミシュランのタイヤラインナップは大きく「スポーツ」「コンフォート」「スタンダード」の3つに分類されます。このあたりは他のタイヤブランドと同じですが、他社と決定的に異なるのは、ミシュランとして必要な総合性能を実現したうえで、「より注力したい性能を高める」という考え方に基づいている点です。

すべての性能を担う究極のタイヤが登場するかもしれない…そんな未来への期待を抱かせる試乗会だった
すべての性能を担う究極のタイヤが登場するかもしれない…そんな未来への期待を抱かせる試乗会だった

 これをミシュランは「トータルパフォーマンス」と呼んでいますが、今回の2つのタイヤはそれに環境性能も妥協なく盛り込んだ、ある意味“欲張り”なタイヤといえるでしょう。走行シーンや状況に応じてタイヤの特性がシームレスに変化するタイヤであり、少しおおげさに表現するならば、「AIのようなタイヤ」と呼びたくなります。

 ここからうかがえるのは、ミシュランが目指す「トータルパフォーマンス」の究極はこれら全ての性能を高次元で完全に融合させ、プレミアムコンフォートもスポーツもエコも、全ての性能を「1つのタイヤ」で賄ってしまおうという思惑なのではないか、ということです。

 プライマシー5エナジーとパイロットスポーツ5エナジーは、そんな“タイヤの未来”を明確に予感させるモノだと感じました。

ミシュランが目指すサステナブルな世界

 2026年6月中旬に開催された、世界の三大自動車レースとして知られる「ル・マン24時間レース」では、TGR(トヨタガズーレーシング)改めTR(トヨタレーシング)が4年ぶり6回目となる総合優勝を果たしました。

今回の試乗会ではサステナブルな取り組みに関する勉強会や、商用向けタイヤでのリグルーブ体験など、ミシュランの様々な取り組みが体感できる形でおこなわれた
今回の試乗会ではサステナブルな取り組みに関する勉強会や、商用向けタイヤでのリグルーブ体験など、ミシュランの様々な取り組みが体感できる形でおこなわれた

 同チームの「TR010 HYBRID」をはじめとするハイパーカークラスのマシンにはミシュランのレーシングタイヤが供給されていますが、実はすでにサステナブル素材を50%以上使用しており、「トータルパフォーマンス」を極限まで追求したプロダクトとなっています。

 レースの世界におけるトータルパフォーマンスとは、「より速く、より快適に(=ドライバーの疲労軽減)、より遠くに、そしてより長く(=タイヤ交換頻度の低減によるエコと、タイム短縮の両立)」であり、それを愚直に実行することこそが勝利への近道です。これらは量産車に求められる要素と全く変わりません。だからこそ、過酷な24時間を1分の隙もなく戦い抜くために磨き上げられたこの思想と最先端技術は、ストリート用タイヤにもしっかり受け継がれています。

 モータースポーツを未来のサステナブルなモビリティ社会に向けた「走る実験室」と位置づけるミシュラン。ル・マンで勝利を重ねることで証明された「環境と走りの高次元での融合」は、プライマシー5エナジー、パイロットスポーツ5エナジーの進化として、今まさに目の前で実を結んでいるのです。

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