福島の超・珍しい「バス専用道」を運転! 「一般車は通行禁止」の“鉄道跡地”で運転士になりきり! 絶滅寸前「2ステ“棒ギア車”」にも乗れるJRバス関東「白棚線運転体験会」に潜入!
バスを運転したい! 機会が少ないなかで「ファン垂涎」のイベント
ジェイアールバス関東(株) 白河支店は、2026年5月と6月内の計4日間にわたり、「第5回 白棚(はくほう)線バス専用道運転体験会」を開催しました。
大型自動車免許があれば、「本物の大型路線バス」を「路上で運転」できるため、注目を集めています。
イベント当日の様子をレポートします。
【画像】「すげえぇぇ!!」 これが「バス運転士」になりきれるイベントの全貌です! 画像で見る(30枚以上)
公共交通で活躍する鉄道や路線バス、観光バスなどを運行する事業者の中には、それらの車両を「運転したい!」という一般ユーザーの要望に応え、「運転体験会」を開催しているケースがいくつかあります。
しかし鉄道車両の運転体験会に対し、バスの場合は開催数が少なく、しかも多くがバス会社への就職希望者に向けた説明会という側面が強いものです。
また、構内や私有地内を走ることが多く、路上を運転できるイベントは数える程しかありません。
ところがJR東日本グループのバス会社、ジェイアールバス関東の白河支店(福島県白河市)では、なんと営業所を飛び出し、「ほぼ路上」と呼べるルートを、バス運転手の気分で“仕業”できるという、バス好きにとっては夢のようなイベント「白棚(はくほう)線バス専用道運転体験会」を過去数回にわたり開催。「バスを運転したい!」というファンから人気を集めています。
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ここでなぜ「ほぼ路上」と記したかというと、白棚線が特殊なバス路線であるためです。
同線は1916年に鉄道路線として開業したものの、第二次世界大戦中の1944年に「不要不急線」として休止扱いに。しかし戦後になっても鉄路は復活せず、1957年にバス路線として再開した経緯を持ちます。
その際、かつての線路跡はおおむねバス専用道として転用されたのですが、次第に並走する国道に路線が移動し、2026年現在、バス専用道は「磐城金山」バス停〜「関辺」バス停間に残るのみです。一般車両は通行禁止となっています。
このイベントが注目を浴びたのは、2024年7月に廃止された「三森」バス停〜「表郷(おもてごう)庁舎前」バス停間のバス専用道で運転体験が可能だからです。
現在もJRバス関東が保有する敷地ではあるものの、「路上」であることに間違いはありません。かつて実際に路線バスが運行されていた区間を自らの運転で走行できるのですから、とても貴重な機会といえるのです。
白棚線バス専用道運転体験会は、2024年秋に第1回が初開催され、それ以降も定期的に催されています。
各回は数日に分けて日程が組まれ、第5回は2026年5月23日・24日、6月13日・14日の合計4日間で開催。1日あたり8名・合計32名が運転体験会に参加しました。今回は、その中の1日を追いかけました。
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参加の申し込みはJR東日本が運営するECサイト「JRE MALL」より先着順で行いますが、参加者枠がごく少ないこともあり、申し込みを開始するとあっという間に埋まってしまうそうです。
体験会では2台のバスを使用し、運転はひとり2往復。異なるバスを1往復ずつ乗ることができます。参加条件は一種・二種大型自動車免許の保有者です。費用は消費税込み5万円で、集合場所であるJR新白河駅までの交通費は含みません。
まずは営業所内で「運転の練習」から
参加者は、東北新幹線の新白河駅に9時15分に集合。全員集まったのち、駅前ロータリーで待っていた白河支店のいすゞ「エルガ」L531-14501号車(型式:QRG-LV234L3・白河200か・・45)に乗車して、白河支店に向かいます。
ちなみにこのエルガもまた珍しい車両で、元は福島県鮫川村で使われていた車両でした。路線バスの営業にはついておらず、主に関係者輸送などで使われている車両です。
白河支店に到着後は会議室で説明会が行われ、挨拶や各種説明のあと、「スタフ」が参加者全員に渡されました。

スタフとは、運転士がバスを運転する際に用いる乗務行程表のこと。このスタフは体験運転用に作成された特別版で、区間の起終点と、区間内にあるバス停の時刻や便名が記されており、参加者はそのダイヤに則って運転するというのですから驚きです。なんという本格的な運転体験!
さらに参加者には、白河市の伝統工芸品「白河だるま」を国鉄バスカラーに塗ったお土産や運転士が装着している手袋などが手渡されました。
説明会終了後は、実際のバス運転士が行う「アルコール検査」と「点呼」を実施します。これもまた“本格的”な体験といえます。

続いて支店の構内で、バスに慣れるための練習運転がスタート。
練習では、指導運転士同乗のもと、専用道の道路幅を再現したというパイロンの間を走行しますが、その幅はバスに対して見るからに狭いのです。
練習路へのアプローチ角度を間違えたり、左右に寄りすぎたりするとパイロンに接触してしまいますので、参加者も真剣です。
筆者(遠藤イヅル)も、練習運転の合間を縫って、新白河駅に迎えに来た元鮫川村のエルガを運転させてもらいました。
体験に使用される2台のうち1台はいわゆる「長尺」のため、筆者が乗った短尺のエルガとは全長が1m以上違うのですが、なんとかパイロンに当てずに運転ができました。それにしても練習路の幅の狭さは想像以上。少し寄っただけで、パイロンを踏みそうになります。

今回の運転体験会で使用される2台は、1台が手首の動作だけでマニュアルミッションの操作ができる「フィンガーシフト」を備える2003年製の日野「ブルーリボンシティ」のL527-03502号車(型式:KL-HU2PREA・福島200か・561)。白河支店に最初から所属する「生え抜き車」です。
そしてもう1台は、今回の第5回体験会の目玉である、床から生えた長いシフトノブ「棒ギア」の操作を楽しめる日野「ブルーリボン」M527-97305号車(型式:KC-HT2MMCA・福島200か19-75)が充当されました。
同車は1997年製の古参車両。新製投入時は茨城県の旧・江戸崎営業所に配置され、以降土浦支店などを経て白河支店で活躍を続けてきました。「ノンステップバス」が普及した今ではみられない「ツーステップ」で、しかもジェイアールバス関東最後の前後扉車両です。
そして97305号車は、実はこのイベントの直後、6月17日に車検が切れてしまうため、このイベントで正式に勇退したのです。まさに一般客が乗車できる最後の機会となりました。
「スタフ」に沿ってダイヤ通りに運転する、本格的な体験運転会
イベントの参加者は、2台のバスをそれぞれ1往復運転することができます。
専用道運転に際し、先に03502号車(ブルーリボンシティ)を運転する組と、97305号車(ブルーリボン)を運転する組に4名ずつ別れてそれぞれのバスに乗り込み、運転体験区間の起終点停留所である「運転体験 三森」および「運転体験 表郷庁舎前」に移動します。なお自分が運転する時間以外は自由行動となります。
筆者は体験運転を行わないので、まず三森12時33分発「2E」便、ブルーリボンシティの03502号車に「乗客」として乗り込みました。
運転区間の途中には「運転体験 高木」「運転体験 梁森(やなもり)」の2停留所が廃止前の姿のまま残っています。バスは停留所に必ず停車して、ドアスイッチを操作して前後ドアを開閉できます。しかも停留所ごとの発車時刻も細かく設定。同乗した白河支店スタッフの掛け声で、ダイヤ通りに終点の表郷庁舎前を目指します。
全4箇所の停留所には、体験運転会の時だけ「体験運転◯◯」と記されたバス停のサインが設置されます。このサインは、実際のバス停と同じメーカーに依頼して製作されたとのこと。
しかも、行先表示機も「白棚線専用道 運転体験イベント号」となっていたり、車内放送も実際の路線で使っている合成音声のものを使用、さらに車内の運賃表示器も通常の路線と同じように作動させるなど、白河支店の力の入れようがわかります。

「2E」便は、途中の高木で表郷庁舎前12時30分発の「1A」便と離合します。バス専用道はいわゆる「単線」で、バス1台分の幅しかないため、広い場所がないとすれ違うことができません。
表郷庁舎前に12時42分に到着後、指導運転士がバスを転回して向きを変え、同バス停12時48分発の「3E」便として三森へと戻り、これで1往復の体験が終了です。
この2E〜3Eの仕業を与えられた参加者は、次は棒ギア車の97305号車に車両を代え、表郷庁舎前14時30分発の「17E」便の運転を行います。
このように8名には、それぞれ違う仕業とスタフが与えられていました。これもまさに路線バスの運転士になった気分を高めてくれます。
体験運転区間を最初はゆっくり走っていた参加者も、慣れてくると次第に速度を出していき、40km/h以上で走行するように。停留所の出発時間も自ら計り、「発車します。おつかまりください」というアナウンスを行う参加者もいるほどでした。
筆者とくるまのニュース編集部員は、実際の路線のように停留所にダイヤ通りにやってくるバスを幾度も活用して、2台の走行シーンを撮影していました。降りる際には降車ボタンを押すこともできるので、運転しない参加者も、乗客の気分を味わえました。

最終バスは三森16時15分発「32H」便・表郷庁舎前16時18分発「31D」便。体験運転終了後は参加者を全員乗せ、指導運転士の運転で支店に戻りました。
また帰路では、鉄道線時代の建物が残るという「番沢」バス停で撮影タイムが設けられ、今日で勇退するブルーリボンのレアな行先を表示するサービスもありました。
支店では会議室に再集合。アンケートに答えた後、個々に「運転証明書」が授与され、ジェイアールバス関東 白河支店の岡見 将浩 支店長が締めの挨拶。
最後に再びアルコール検査を行って、すべてのプログラムが終了しました。
バスをたくさん運転したい!という希望を叶えてくれる、価値あるイベント
ところで、イベントの参加費「5万円」と聞いて、みなさんはどう思ったでしょうか。もしかすると「高い!」と感じた人は少なくないかもしれません。
しかし参加者に聞いてみたところ、ほとんどの人が「価値があるイベント」「他では得られない最高の体験」と答えました。
冒頭で述べたとおり、バスを運転する機会自体や、路上を走るバスの体験会が少ないという現実があります。
そのようななか、白棚線バス専用道運転体験会では、「バスをたくさん運転したい」というバス好きの何よりの夢を叶えてくれるのです。
しかもスタフを渡され、ダイヤ通りに走り、ドアの開閉やアナウンスまでできるのですから、その体験にはほかのイベントでは代え難い魅力があると感じました。

参加者の多くが複数回参加で、なんと5回すべてに参加している「皆勤賞」もいるといいます。これこそが、このイベントが参加者にとって大いに価値がある「何よりの証拠」といえるでしょう。
なお参加者には、バスが好きでバスの運転士に就いたという若き現役ドライバーの姿も。
話を聞いてみると、「いつも乗車しているバスと違う、昔のバスを運転してみたくて応募しました。実際に乗ってみたら、シフトノブの操作がまったく異なっていて難しかったです。パワーがあるのも現代のバスとの違いですね」と語ってくれました。

そしてこの運転体験会が好ましく感じられたのが、白河支店のスタッフもイベントを存分に楽しんでいたことです。
岡見支店長は「終了後のアンケートをもとに、回数を重ねるごとに改善を行って、参加者が楽しんでもらえるようにしてきました」と話します。
その「おもてなし」の心は、前述したスタフや特製のおみやげ、バス停サインなどの作製からもひしひしと伝わってきます。それが、暖かくてアットホームな雰囲気につながっていたのだと思いました。
なお、ジェイアールバス関東白河支店では、2026年7月11日(土)、12日(日)、8月29日(土)、30日(日)に第6回白棚線バス専用道運転体験会の開催を予定しています(6月24日現在、空きは「残りわずか」)。
予約の締め切りは、各開催日8日前の23時59分(例:7月11日分は7月3日23時59分)とのことですので、大型自動車免許を持っていてこのイベントが気になった人は、ぜひ申し込んでみてはいかがでしょうか。

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