マツダ新型「CX-5」にディーゼルがない! 根強い人気誇る“お家芸”なぜ消滅? ファンに愛されるも「主役になれなかった」理由とは
新型「CX-5」ディーゼル消滅は悲報じゃない!?
2026年5月21日より、3代目となるマツダの新型「CX-5」が発売となりました。
【動画】超カッコいい! これがマツダ3代目「新型CX-5」の姿です! 動画で見る
まず導入されたのは2.5リッターガソリンのマイルドハイブリッドで、これまでCX-5の代名詞だったディーゼルモデルの姿はありません。
マツダのディーゼル「SKYACTIV-D」は、日本の乗用ディーゼル車における「うるさい」「振動が大きい」「黒煙を出す」といったネガティブなイメージをクリーンディーゼル技術で大きく変えた、国内でも屈指の優秀なパワートレインです。
2012年に登場した初代CX-5は、国産車としては珍しいクリーンディーゼルSUVとしてヒットを記録。ディーゼル特有の低回転域から発生する大トルク、高速巡航時の優れた燃費性能、そして軽油の経済性は、長距離移動の多いユーザーから高い支持を集めました。

実際、2025年度のディーゼル車新車登録台数の内訳を見ると、輸入車が29%、マツダが25%、三菱が24%、トヨタが22%となっています。
国内メーカーのディーゼル市場において、マツダは約4分の1を担っている計算です。

一方で世界は電動化へ大きく進んでいます。
2015年に発覚した排出ガス不正問題を契機に環境規制が厳格化され、欧州メーカー各社はディーゼルからHEV(ハイブリッド者)やPHEV(プラグインハイブリッド車)、BEV(バッテリーEV:電気自動車)への移行を加速させました。
ディーゼルエンジンが厳しい規制をクリアするには高価な後処理装置が必要となり、世界的に自動車販売台数が減少するなかで開発コストを回収するのは容易ではありません。
こうした背景から、多くのメーカーが乗用ディーゼルからの撤退や縮小を進めています。
ただし、日本の市場事情は欧州とは異なります。最大の違いは軽油とガソリンの価格関係です。
欧州や北米、中国では、軽油がガソリンと同等、あるいはそれ以上の価格に設定されている国も少なくないなか、日本では物流産業を支える政策的な背景もあり、一般的にハイオク、レギュラー、軽油の順で価格が安くなっています。
つまり日本のディーゼル車ユーザーは、「燃費の良さ」と「軽油価格の安さ」という二重のメリットを享受できるのです。
もともと日本人は世界的に見ても燃費への関心が高く、ランニングコストを重視する傾向があります。車両価格が高くても、走行距離が多いユーザーほど差額を回収しやすいことから、一定の支持を得てきました。
実際の販売データにもその傾向が表れています。
日本自動車販売協会連合会(JADA)の統計によると、2020年度から2025年度の登録車において、ガソリン車の比率は54.6%から30.5%へ低下し、HEVが37.9%から61.1%へと急拡大しています。
そんななかでも、ディーゼル車は6.1%から4.5%へ減少したものの、HEVへの急速なシフトが進むなかでも一定の需要を維持しているのです。
ディーゼルでなければ満足できないユーザー層が、現在も存在していることを示しているといえます。

筆者(自動車ジャーナリスト 吉川賢一)自身も、欧州メーカーのディーゼル車を2台乗り継いできました。
高速道路主体の移動では20km/Lを超える燃費を記録することも珍しくなく、60L級の燃料タンクと組み合わせれば1000km以上を無給油で走れることもあります。
また、低回転から発生する太いトルクによって追い越しや合流も余裕があり、長距離移動での疲労が少ない点は大きな魅力です。
移動距離が長いユーザーにとっては、今でも非常に魅力的なパワートレインだと感じています。
もちろんアイドリング時の振動や、車外で聞こえる独特のエンジン音など、HEVに及ばない部分もあります。それでも長距離ツアラーとしての実力には、今なお高い価値があると思います。
しかし、日本でディーゼル車が主流になることはありませんでした。最大の理由は、日本ではハイブリッド車が早くから普及していたことです。
トヨタ「プリウス」を筆頭にHEVが市場に浸透し、「燃費が良くて静か」という価値が広く定着しました。
ディーゼル車が得意とする燃費性能は魅力でしたが、多くのユーザーにとっては、振動や騒音が少なく街乗りにも適したHEVのほうが使いやすかったのです。
さらに日本では年間走行距離が比較的短いユーザーも多く、ディーゼル車の価格差を燃料代で回収できる人が限られていました。
その結果、長距離移動が多いユーザーを中心としたニッチな市場にとどまったのです。
それだけに、マツダの主力SUVであるCX-5からディーゼル仕様が姿を消したことは、日本のディーゼル市場にとって大きな転換点といえるでしょう。
マツダが磨き上げてきた「クリーンディーゼルのマツダ」から、「電動化ブランド」への移行を象徴する出来事ともいえます。
※ ※ ※
グローバルな規制やコストの観点を考えれば、乗用ディーゼル車の縮小は避けられません。
しかし、日本では軽油価格の優位性や長距離移動との相性の良さから、現在も一定の支持を集めています。
ディーゼルが主役になれなかったのは、ディーゼルが支持されなかったのではなく、日本ではHEVがあまりにも強かったのです。
新型CX-5からディーゼルが姿を消したことは、日本のクリーンディーゼル文化がひとつの転換点を迎えたことを示しているのかもしれません。
しかしいっぽうで、マツダのSKYACTIV-Dが切り開いた価値は、新世代のプレミアムラージモデル「CX-60/CX-80」向け直列6気筒ディーゼルに昇華し、あらたな進化を続けています。
長距離移動が多いユーザーは、こちらも併せて検討してみると良いでしょう。

ライブカメラ



