2026.06.11
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アイシンの「挑戦の軌跡」を体感 展示館リニューアルで見えた、メガサプライヤーの底力とは

アイシンの歴史と未来を体感する「コムセンター」リニューアルオープン 失敗を恐れぬ「挑戦の軌跡」をたどる

 アイシンは、愛知県刈谷市の本社内に位置する展示館「コムセンター」の1階「ヒストリーゾーン」を大幅にリニューアルし、2026年6月11日に報道陣向けのお披露目会を開催しました。
 
 目玉となるヒストリーゾーンでは、過去の成功製品だけでなく、あえて「失敗作」も展示しています。
 
 自動車業界が100年に一度の大変革期を迎える中、ユーザーに寄り添い、社会課題の解決に挑み続けてきた同社のDNAとは、どのようなものなのでしょうか。

【画像ギャラリー】これがアイシンの「挑戦」の歴史です

アイシンの黎明期を支えた「HA-1」
アイシンの黎明期を支えた「HA-1」

 コムセンターは、アイシングループの創立50周年を記念して2015年に建設された施設です。

 アイシンの歴史をはじめ、自動車部品やエネルギー関連など幅広い分野における製品・技術や企業活動を紹介しており、一般公開されています。

 館内は大きく1階と2階のフロアに分かれています。1階には、今回リニューアルされた「ヒストリーゾーン」をはじめ、グループ会社のデモカーやプロフィールを紹介する「コーポレートゾーン」、エネルギー関係の展示を集めた「エネルギーゾーン」、そして来訪者とクリエイティブな打ち合わせができるスペース「CREATIVE HUB」も。

 2階の「プロダクツゾーン」には、2025年のジャパンモビリティショーのパビリオンを移設した「A’s GARAGE」や、2040年頃のアイシンが描く未来を体感できる「イマーシブシアター」、製品の進化と電動化への取り組みを示す「進化の樹」など、最新の主力製品群と未来へのビジョンが展示されています。

アイシン創設期の遍歴がわかる貴重な場となっている
アイシン創設期の遍歴がわかる貴重な場となっている

 今回、2015年の開館以来初めて1階の「ヒストリーゾーン」が全面改修されました。リニューアルのメインテーマは「アイシンの挑戦の軌跡」です。

 以前の展示では、アイシンが過去に生み出してきた製品そのものを約130点と可能な限り多く並べ、来館者に見ていただくというコンセプトでした。しかし今回のリニューアルでは、展示製品数を約40点へと大幅に厳選。

 製品単体を羅列するのではなく、失敗を恐れずに「社会課題の解決」や「新たな価値創造」に挑んできた先人たちの姿勢と、製品誕生の背景にあるエピソードを深く丁寧に伝えることを重視した構成へと生まれ変わりました。これにより、アイシンがどのように社会課題に向き合い、世の中に製品を送り続けてきたのかを、より深く理解できる内容となっています。

 展示エリアは、創業期を中心に、およそ10年ごとのスパンで9つの「挑戦テーマ」が時代順に棚に展示。各展示什器には、その時代のテーマ、時代背景と事業変遷、そして世の中の動きを踏まえて誕生した製品を配置。さらに、一部の展示にはタッチパネルが併設されており、画面を操作することで開発の裏側にあるエピソードを動画などで深く知ることができる工夫が凝らされています。

 お披露目会の冒頭、アイシン広報部の花井部長より、今回のリニューアルに込めた思いや背景について、次のように語られました。

「自動車業界が100年に一度の大変革期を迎える中、アイシンがこれまでもこれからも大切にしていく変わらない価値観として、今回は『挑戦』をリニューアルのテーマに据えました。

 過去の展示では成功した製品を数多く並べることにしていましたが、今回は方針を大きく変えています。単なる製品の羅列ではなく、『アイシンが時代やお客様にどう寄り添い、どんな考えで挑戦してきたか』という背景やプロセスを知っていただくことに重点を置きました。

 新たな挑戦には困難や失敗がつきものです。そのため、今回はあまり日の目を見なかった『失敗作』もあえて隠さずに展示しています。お客様からの難しい要望に対しても決して『できない』とは即答せず、一度持ち帰ってなんとか解決策をひねり出す。そんな『愚直で真面目、少し泥臭い一面』こそが、私たちの企業カラーであり最大の強みだからです。

 こうした失敗経験も含めたアイシンの等身大の歩みや姿勢を知っていただくことで、来場者の皆様に私たちの会社をより深く理解し、もっと好きになっていただきたい。今回のリニューアルには、そうしたブランディングの願いも込められています」

ヒストリーゾーン(1階)の展示ハイライト

 ヒストリーゾーンの幕開けである創業期の展示では、「アイシンが挑んだ『移動』の原点 航空機産業への挑戦」と題し、豊田喜一郎氏の大衆向け航空機に向けた取り組みや、愛知工業・新川工業といったアイシンの前身企業の成り立ちを紹介。戦後の転換点として、平和産業である家庭用ミシンの開発に見出した活路とその歴史がパネルで詳細に解説されています。

 続く展示では、ミシン生産で培った精密加工技術が自動車部品へと応用され、大きな成功を収めた事例として、2速半自動変速機「トヨグライド」が紹介されています。

 量産乗用車に国内で初めて搭載され、トヨタの「マスターライン」などに採用されたこの製品は、トヨタ自工でさえ月産50台の量産に苦労するほど困難なものであり、1959年にトヨタによる生産が開始されました。その後、アイシン(当時の愛知工業)はその精密加工技術を生かし、1961年よりトヨグライドの受託生産を開始し、部品業界における地位を大きく向上させました。

 しかし、挑戦の過程には必ず試練があります。アイシンが受託生産を開始した1961年当時、時速160kmを超える走行時にオイル漏れが発生するという重大な品質問題に直面。

 アイシンはこの失敗から品質の重要性と過酷な走行試験の必要性を痛感し、1970年に自前の「藤岡試験場」を建設しました。

 自ら設計・試験を実施して開発へフィードバックする体制を確立したことが、技術力の向上と部品メーカーとしての自立を強く後押ししたという「失敗から得た大きな教訓」が、当時のテストコース略図や耐久走行のナンバープレートとともにリアルに展示されています。

プロダクツゾーン(2階)などの最新展示ハイライト

過去のジャパンモビリティショーでの展示もここで振り返ることができる
過去のジャパンモビリティショーでの展示もここで振り返ることができる

 過去の挑戦の歴史を学んだ後には、現在のアイシンが描く未来のモビリティ社会の展示が広がっています。

「アイシンが提供する『移動』の価値」のパネルでは、「走る・曲がる・止まる」の基本機能を支えるパワートレインユニットやブレーキシステム、ステアリングなどに加え、熱マネジメントデバイスやバッテリーヒートシンクを含む電池骨格(ギガキャスト)といった最新コンポーネントが解説されています。

 これらを「車両統合制御」によって環境に合わせて最大限に引き出し、ユーザーに寄り添う快適な乗り心地と、安全・安心な移動体験を追求している姿勢が視覚的に理解できます。

 また、「電動化への対応」のコーナーでは、eAxle(電動ユニット)の小型・高効率化や回生協調ブレーキの開発、さらには空気抵抗を減らすグリルシャッターなどの空力デバイスを組み合わせることで、クルマ全体の「電費向上」を図り、カーボンニュートラルの達成に向けた取り組みを強力に推進していることが示されています。

2階には様々なトランスミッションの展示も
2階には様々なトランスミッションの展示も

 ネオン管のデザインが目を引く「What’s AISIN Intelligence?(アイシンの知能化ってどういう事?)」のエリアでは、アイシンの強みである幅広いハードウェア製品群に、最新の認知・判断技術(ソフトウェアやセンシング)を掛け合わせるビジョンが解説されていました。

 データ解析や地図情報を用いて社会インフラやクルマ同士が繋がり、クルマ自身が認知・判断を行って「走る・曲がる・止まる」という行動と融合させることで、危険をあらかじめ回避したり、誰でも快適に過ごせる移動空間を提供したりと、移動のあらゆる場面に新たな付加価値を生み出すことを目指しています。

パワートレインのイメージが強いアイシンだが、軽自動車のスライドドアシェアはほぼ100%だという
パワートレインのイメージが強いアイシンだが、軽自動車のスライドドアシェアはほぼ100%だという

 さらにグローバルな事業展開を示す展示として、「AISIN AFFORDABLE AUTO PARTS MALL(補給適格部品の総合デパート)」があります。

 これは世界中の多種多様な市場ニーズに応えるため、ワイパーやバッテリー、サスペンションパーツなど、アフターマーケット部品の品揃えを包括的に強化し、総合モールのように幅広く展開している事業の姿を象徴しています。

※ ※ ※

 アイシンは今後も「コムセンター」を通じて企業理解の促進を図るとともに、社会課題の解決に向けた挑戦や取り組みを積極的に発信していくとしています。

 過去の失敗を包み隠さず展示し、ユーザーに寄り添い続けてきたアイシンの「挑戦の軌跡」。そして、100年に一度の大変革期に挑む最新のインテリジェンス技術と電動化への取り組み。その両方を深く体感できる新生「コムセンター」は6月22日から一般公開されます。

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