レクサス「新型ES」まもなく発売! 従来の「コンサバモデル」から一変! 「新しい時代のセダン」を予感させる仕上がりに! 6月の“日本発売”前に米国で体感した印象は?
コンサバなモデルから「セダン復権」を目指した新型ES
レクサスのミドルサイズセダン「ES」は、フラッグシップの「LS」とともに、1989年のブランド創業時から一度も途切れることなく歴史を積み重ねてきた、いわばレクサスの“生き字引”です。同時に、長年にわたりビジネスを支えてきたエースでもありました。
あえて「過去形」でこう書いたのは、ここ最近は「NX」、「RX」、「TX」という「SUV三兄弟」にその座を奪われつつあるからです。
そんな背景もあり、実は当初の企画は「現行モデルの大改良」でした。しかし、チーフエンジニアの千足 浩平氏は「セダンの復権」をコンセプトに掲げ、刷新を決断。そうして生まれたのが、今回紹介する8代目となる新型です。
日本では今年2026年6月中旬に発売を予定していますが、それに先駆けて北米仕様に試乗してきました。場所はアメリカ・サンディエゴ近郊の一般道と高速道路です。
いきなり結論から言ってしまうと、見た目も走りもセダンの“型”を受け継ぎながら、さまざまな意味で“型破り”を成し遂げたモデルだと感じました。その詳細を説明していきましょう。
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エクステリアは、広報写真や屋内のスタジオで見ると「ややずんぐりした印象」が拭えず賛否があったのも事実です。
しかし、リアルワールドの太陽光の下で実車を改めて見ると、光と影のコントラストによって、伸びやかで抑揚のあるエレガントな4ドアクーペスタイルがより際立って見えます。素直に「いいセダンだな」と感じました。
ボディカラーは豊富に用意されています。メインカラーの「ソウ」はパーソナル志向、レクサス定番の「ソニッククロム」はフォーマル志向と、色によってまったく異なる表情を見せてくれるのが印象的でした。
インテリアは、セダンとは思えないほどの開放感ある空間が特徴です(北米仕様には大開口パノラマルーフの設定はありません)。パッと見の派手さやインパクトこそありませんが、エクステリア同様にエレガントな印象。夜になると面発光加飾が灯り、エモーショナルな一面も見せてくれます。
インパネ周りは、奇をてらわない水平基調のシンプルなデザインです。バイザーレスのメーターと大型のセンターモニターがレイアウトされており、どちらも次世代型へと進化して機能性は格段にアップ。ただ、メーターデザインに関しては、良く言えばシンプル、悪く言えば少し素っ気ない印象を受けたのが個人的には惜しいポイントでした。
物理スイッチは少なく、多くの操作をタッチパネルで行います。ただしインパネセンターには、静電タッチパネルでありながら、押すと物理スイッチのような“クリック感”の「レスポンシブヒドゥンスイッチ」が採用されています(北米仕様は常時点灯式)。触感もなかなかです。

居住性については、2950mmのロングホイールベースと、セダンとしては高めの1550mmの全高、さらにスッキリとしたデザインやガラス面積の拡大も相まって、LSを超えるほどの広々とした空間を実現しています。
なかでもリアシートは、「セダンのような閉鎖感はないけれど、ミニバンよりもプライベート感がある」という、絶妙なバランスが新鮮です。
「リアコンフォートパッケージ(オットマン付き電動シートやアームレスト内蔵リモコンなど)」を選べば、ショーファードリブン(お抱え運転手付きのクルマ)としてのニーズにも十分応えてくれそうです。
多彩なパワートレインを用意する新型ES それぞれの特徴は?
メカニズムはどうでしょうか。パワートレインには、BEV(バッテリー電気自動車)とHEV(ハイブリッド車)という2つの選択肢が用意されています。
レクサスはブランド全体で電動化を牽引する役割を担っていますが、新型ESはその中でもさらに先を行く存在となっています。
BEVは2タイプを用意。FF(前輪駆動)の「ES350e」はフロントにeAxle(eアクスル)を搭載し、システム出力165kW。AWD(四輪駆動)の「ES500e」は、フロントとリアにそれぞれeAxleを搭載したツインモーターAWDでシステム出力は252kWです。
バッテリー容量はともに74.7kWhで、航続距離はES350eが約650km、ES500eが約600kmとなっています(米国仕様)。日本のWLTCモードで計測すると、もう少し伸びると予想します。

実際に走らせると、ES350eでも十分以上のパフォーマンスです。応答の良さは言わずもがなですが、常用域のトルク感や加速力は「ES500eは必要ないのでは?」と思うくらいの力強さがあります。
ただ、プレミアム系のBEVに多いモリモリ湧き出るパワー感ではなく、滑らかにスーッと加速して、いつの間にか速度が出ている……という大人なフィーリング。この辺りはいい意味でパワートレインが“黒子”に徹しているように感じました。
ES500eはES350eと比べるとスペック上は約1.5倍の出力です。試乗前は「(スポーティグレードの)F SPORT的な存在かな?」、「ESの世界観をぶっ飛ばすのかな?」と思いきや、意外とジェントルでした。
常用域のトルク感、加速感はES350eとほぼ同じに感じられますが、そこからアクセルをグッと踏むと伸び感ある加速が続く感じは、エンジン車の気持ちよさに似ています。
ちなみに0-100km/hは5.9秒と、ESの中ではズバ抜けた性能ですが、体感上はいい意味で“速さ感”がありません。このあたりは大排気量NAのようなフィーリングの出力の出し方はもちろん、前後モーターの協調による姿勢制御「DIRECT 4」により加速時のピッチングが抑えられているのも大きいようです。
要するに、性能の限界を使い切るのではなく、「ゆとり」と「余裕」に活用……といったイメージです。
このフィーリングはエレガントなESにピッタリな特性だと思いますが、個人的にはドライブモード・スポーツは応答や加速特性を鋭くするだけでなく、V型8気筒エンジン搭載の「IS500」や「RC F」がラインナップから消えつつある今だからこそ、それをカバーするような“裏の顔”(狂暴さ)があってもよかったのではないか、とも思いました。

一方のHEVは、形式的には「2.5リッターエンジン+THS II」と従来モデルから変わらないように見えますが、実はシステム自体が第4世代から1つ飛び越えて「第6世代」へと進化しています。
具体的には、THSとしては初となるトランスアクスル、モーター、インバーター、DC/DCコンバーターを1つのユニットに統合した「4in1システム」を採用。これにより、軽量・コンパクト化はもちろん、ノイズや振動の大幅な低減も実現しています。
さらに、直列4気筒2.5リッターエンジンとモーター、バッテリーのすべてが高出力化されたことで、システム出力は従来の215hpから244hpへとパワーアップ。加えて、従来モデルには設定のなかったAWD(リアモーター出力:55ps/123Nm)も新たに用意されました。
試乗前は「BEVがメインでHEVはサブ」と思っていましたが、試乗してビックリ。常用域のレスポンスと力強さは、BEVのES350eとほぼ同等レベル。
アクセルを踏んでもエンジン回転をあまり上げることなくトルクが立ち上がる特性は、レクサスHEV史上最大の“電動車感”と言っていいです。従来比約1.7倍のモーター高出力化が効いているのでしょう。
常用域はエンジン音も“ささやき”レベルで、静粛性の高さも相まって「ほぼBEV」と言ってもいいくらい。
アクセル開度をグッと上げた時に「エンジンが必要以上に唸るのではないか?」と思いきや、新型ESはエンジンがより遠くで回っているような音量かつ濁音が抑えられた音質により「あれっ、そうでもないな」と感心。ここは4in1システム採用による根本的なノイズ・振動の低減が効いているのでしょう。
アクセル全開にしない限りはエンジン回転と加速感のズレ(いわゆる「ラバーバンドフィール」)もかなり抑えられているので、THS史上最もリニアな特性になっていると言ってもいいかなと思います。第6世代THS、恐るべしです。
乗り味は相反する「骨太だけどエレガント」?
フットワークも、一見変わっていないようでいて全面刷新されています。骨格は形式上「TNGA GA-K」ですが、これまでの知見やノウハウをフィードバックした“第2世代”へと進化。さらに、BEVとHEVに兼用できる「マルチパスウェイプラットフォーム」となっています。
そのうえで、近年のレクサスが推進する「味磨き活動」で培ったボディ構造(フロント前端、フロア、リア後端部への補強など)が惜しみなく盛り込まれています。
サスペンションは、フロントがストラット、リアにはES初となるマルチリンク式を採用。日本仕様にはAVS(電子制御連続可変ダンパー)やDRS(後輪操舵)が採用される予定ですが、今回の北米仕様にはそれらの設定はありません。
開発者曰く「今回は、まずは“素”の良さを味わってください」とのことでした。

タイヤは、235/55R19サイズ(試乗車はブリヂストン「トゥランザ」、ダンロップ「eSPスポーツMAXX」)と、235/45R21サイズ(試乗車はミシュラン「eプライマシーAS」「プライマシー5エナジー」)を履いています。
その走りを一言で表現するならば「骨太だけどエレガント」です。一体それは何か。筆者(自動車研究家 山本シンヤ)が大好きな、「〇〇なのに△△」という、見事な二面性を持っているところです。
軽めのアシストで滑らかだけど芯の強さを感じる「ステアリングフィール」、穏やかだけど切り始めからスッとクルマが動く「応答性」、クルマの動きはゆっくりだけどしっかりコントロールされている「コーナリング姿勢」、4つのタイヤが路面をビターっと捉える接地性の高さがあるのに、クルマがより小さく/より軽く感じる一体感と手の内感との「バランス」など…。
レクサスが目指す「二律創生」が実現された走りに仕上がっているのです。
ここは基本素性を大きく高めたことと、レクサスの「味磨き活動」のフィードバックした強靭でしなやかな“体幹”あってのものでしょう。しかし、試乗していて感じたのは、クルマがそれを声高らかに主張せず、いい意味で“黒子”に徹していることです。
つまり、与えられた武器を性能に全振りせずに、あえて「ゆとり」と「余裕」に活用しているような走りなのです。基本はエレガントですが、ドライバーの操作やその時も気持ち、そして走る道やシーンに合わせてスポーティにも化ける…。そんな奥深いフットワークです。

ちなみにパワートレインによって乗り味は若干異なります。
FFのHEV(ES350h)はシリーズ中、最も車両重量が軽いので軽快なクルマの動きですが、ESのキャラクターを考えるともう少し落ち着きがあったほうがいいかなと感じたところ。
AWDのHEV(ES350h)とBEVのES350eは、軽快さと落ち着きのバランスが整っており、個人的にはESのなかでベストだと感じました。
ちなみにこの2台、パワートレイン/バッテリー含めた基本諸元は異なりますが、試乗するとほぼ同じ走り味/乗り味に仕上げられていて驚きました。従来であれば確実にBEV有利な乗り味になるはずです。
やはりTNGA GA-Kマルチパスウェイプラットフォームの“基本素性”と“懐の深さ”が効いているのでしょう。
そしてフラッグシップのES500eはDIRECT 4を搭載しているので、「他のモデルとは別格かな?」と思ったものの、コーナリング中に後輪がグッと押し出す感覚や旋回軸がより後ろにある印象ですが、基本はES350eの延長線上の走り味/乗り味でした。
良く言えば制御を感じさせない自然なフットワークと言えますが、個人的にはパワートレイン同様に、駆動方式の概念を覆すような走りで「お前はスポーツセダンでもあったのか?」というような、“裏の顔”があってもよかったな、と思いました。

乗り心地はどうでしょうか。今回の試乗コースは路面の凹凸や舗装の荒さなどになかなかの厳しい環境でしたが、カドの丸い入力、いなし効いた足の動き、人間の波長に合わせて僅かに時間をかけた吸収性、目線をブラさないフラット感などなど、「これならAVSなしでもいいのでは?」と思うくらいのレベルに達していました。
重箱の隅を突くと、細かな凹凸がお尻の辺りでブルブルと振動して残る感じはありますが、筆者の経験からこの辺りは日本仕様に採用されるAVSで何とかなるレベルだと思っています。
ちなみにタイヤによっても若干印象は異なり、19インチのトゥランザは乗り心地・静粛性は高いが初期応答は若干穏やか、eSPスポーツMAXXはハンドリングのレスポンス重視ですが、ロードノイズは高めの印象でした。
一方、21インチは19インチに対して入力の強さが若干あるものの、「比べれば」と言うレベル。ハンドリング・乗り心地・静粛性の総合バランスは、ベストだと感じました。
面白いのはミシュランのオールシーズンタイヤ(eプライマシーAS)とサマータイヤ(プライマシー5エナジー)での性能差はほとんど感じられなかった事です。改めてミシュランのトータルパフォーマンスの高さにビックリしました。
そろそろ結論に行きましょう。新型ESは、静かながらも強い主張が色濃く込められた「新時代のセダン」に仕上がっていました。
レクサスのモデルラインアップには様々な“役割”がありますが、LSは周りを明るく照らすリーダーであり、強さと明るさを持った“太陽”のような存在。対するESは静かに見守り、堅実で包容力の高い“月”のような存在だと筆者は考えています。
それがゆえにこれまでのESは良くも悪くも「コンサバ(保守的)」な印象が拭えませんでしたが、新型ESは違います。従来のセダンが持つ魅力はそのままに、今までのセダンにはない新たな付加価値を備えたモデルと言っていいと思います。
「セダンから逃げない」ーー。筆者はレクサスの新たな挑戦を応援したいと思います。そして日本のユーザーにもこう伝えたいです。「SUVもいいけど、いいセダンに再び乗ってみませんか?」と。

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