マツダ「新型CX-5」に試乗! ハンドルを握って感じた「マツダの走りが変わった」の理由とは? マツダを支える「絶対的エース」の大きな進化とは
マツダ「新型CX-5」に試乗!
マツダの2026年3月期の決算は「減収減益」となりました。
上半期の苦境を乗り越えて黒字を確保しましたが、ここで反転攻勢の大きな柱となるのが、3代目となる新型「CX-5」です。
かつてCX-5の初代モデルは、2012年にマツダの次世代技術「スカイアクティブテクノロジー」をフル搭載してデビューしました。
2017年に2代目へとバトンを繋ぎ、一時期はマツダの全生産台数の3分の1(現在は4分の1)を占めるまで成長。
名実ともにマツダの“絶対的エース”となったのです。
そんなCX-5の最新作を、正式発売の前に試乗してきました。
開発のテーマは「次世代エモーショナル・デイリーコンフォート」。
開発の陣頭指揮を取った主査の山口浩一郎氏は、次のように語っています。
「かつてCX-5は色々な意味で背負うモノが多かったのですが、今はマツダの上級ラインナップにラージ商品群が展開されています。そこで新型CX-5は使い勝手に徹底してこだわりながら、実質的な『SUVの王道』を目指して開発することができました」

今回の新型CX-5について、いきなり結論から言ってしまいましょう。
「マツダのエースは、マツダの反逆児」です。
なぜ、筆者(山本シンヤ)がそう感じたのか、その理由を詳しく紐解いていきたいと思います。
まずデザインは一見キープコンセプトですが、中身は大きく変わっています。
プロポーションはよりスクエア、面構成はシンプルです。フロント下部などにはSUVらしい力強さをプラスしつつ、メッキ加飾を抑えることで、やや背伸びをしていた2代目に対して、ぐっとカジュアルな方向へシフトしました。
部分的に「EZ-60」や「CX-6e」のような未来的な雰囲気も感じられますが、個人的には「もう少し攻めても良かったかな」とも思います。
ボディカラーはマツダお得意の「ソウルレッドクリスタルメタリック」や「マシングレー」も用意されていますが、新型のメインカラーは初代のアイコンだったブルーの現代的解釈「ネイビーブルー」です。
なお、新型のグレードは3つ(L/G/S)に集約され、ユーザーの用途に応じた世界観はディーラーオプションで表現する形としています。
個人的には、ボディ下部やフェンダーアーチがピアノブラック塗装になる上級の「L」よりも、未塗装の樹脂素材を活かした「G」の方が、新型CX-5のキャラクターを上手に表現できていると感じました。
「インテリア」は直近のマツダ車と一線を画すもの
インテリアは直近のマツダ車とは一線を画す「格段の開放感」と「視界の良さ」に驚きます 。
水平基調のシンプルなインパネデザインに加え、細く設計されたAピラー、ボンネットの見せ方の工夫、拡大されたリアクォーターウィンドウ、そして電動グラスルーフの採用がこれに大きく貢献しています。
それでいてデザイン性が損なわれていないのは見事で、インパネからドアトリムへと繋がるラウンド感のある造形は、かつての名車「ペルソナ」を彷彿とさせ、思わずニヤリとする場面も。

さらにインフォテイメントは「コマンダーダイヤル×物理スイッチ」から「大画面×タッチパネル式」に刷新。
ハードウェアはトヨタからの供給をベースにマツダ用へ最適化されたもので、残された物理スイッチは前後のデフォッガーとハザードくらいです。
それに対してステアリングスイッチはちょっと多めで、逆に操作し辛い所も。
個人的にはMIドライブのスイッチは独立させても良かったかなと感じました。
あれだけこだわったコマンダーダイヤルを新型では採用しなかった理由を開発者に尋ねると、「人間中心の思想は不変で、その手段が変わっただけなのです。Googleの採用によりクルマ側の操作(エアコン)も音声で操作可能ですので」と教えてくれました。
ちなみにディスプレイはグレードによってサイズが異なります(Lグレード:15.6インチ/それ以外:12.9インチ)。
機能的には15.6インチが使いやすいのですが、インパネとの見栄えのバランスは12.9インチのほうがスマートに見えるかもしれません。
パッケージングも進化しています。
ホイールベースを先代から115mm延長、全高も30~35mm高くなったことで、後席の足元・頭上スペースが大きく拡大。
加えて、リアドアの開口幅(後方に向かって+70mm)と開口角を広げ、ヒップポイントを下げることで、乗降性も劇的に向上しています。
ラゲッジルームも奥行きが+45mm、高さが+30mmとなり、スーツケース4個の積載やベビーカーを縦方向に積むことも可能です。
シート素材は「L」は本革、「G」は合皮/レガーヌですが、個人的にはGのみに設定される白/黒コーディネートは決して背伸びしていないのに安っぽさを感じさせない絶妙なバランスで、オススメです。
「やればできるじゃない!」と感じるポイント
パワートレインとフットワークは、すべてをゼロから開発したラージ商品群とは真逆のアプローチで、先代モデルのリソースを徹底的にアップデートして活用。
しかし新型CX-5は、それをネガとせず、むしろ武器に変えて「これまでやれなかった新しい挑戦」を随所に盛り込んでいます。
パワートレインは2.5リッター×24Vマイルドハイブリッドと6速ATの組み合わせ。
ハードウェア自体はマツダ3と同じモノですが、CX-5に合わせて最適化されています。
具体的には、ドライバーの操作に対するリニアな加速特性はそのままに、軽い操作で加速を立ち上げるような制御が盛り込まれています。
実際に走らせると、アクセル踏み始めのスロットル特性を若干立たせてありますが、違和感はほぼありません。
むしろゼロ発進時に「スッと」と前に出る感覚は、まるでマイルドハイブリッドのアシストが増したかのような軽快さがあります。
ただエンジンを回していくと、若干伸びの良さが薄れた印象も受けました。

“デイリーコンフォート”のコンセプトを考えれば出力/燃費共に必要十分のパフォーマンスですが、それ以上の余裕と力強さを求めるなら、来年の発売に向けて鋭意開発中の「スカイアクティブZ+ストロングハイブリッド」待ちでしょう。
正直なところ、個人的にはディーゼルがラインアップから落ちてしまったのはとても残念。
静粛性に関しては、特定の周波数の音を目立たせない音響特性の最適化や、吸遮音材の適材適所の配置、空力改善による風流れ制御などにより、風切り音やロードノイズがかなり抑えられています。
ただ、周りが静かになったぶん、相対的にパワートレインの音が耳に届きやすくなった印象も。
最新のクルマとしてはエンジンサウンドをあえて“主張”させるチューニングで(Mi-Driveのスポーツモードではアクティブ・サウンド・コントロールをフル活用)、これは個人的に「ノーマルモード」のときはもう少し音量を抑えたほうがいいと思いました。
フットワークは先代のハードを用いていますが、居住性アップにためホイールベースは2700→2815mmに延長。
それに伴う各部の最適化に加えて、今回はサスペンション周りを中心に手を入れています。
ハード的にはダンパーZF製、タイヤはBS製「トゥランザ」を採用していますが、注目すべきは走りのセットアップの“考え方”の変化で、これは走り始めてすぐに実感できました。
最初の驚きはステアリングのアシストが軽くなった事です。
ただ単に軽くなっただけでなく、フリクションの少ないスムーズさとタイヤが路面に接地している事を実感できる直結感が印象的。
従来のマツダは“手ごたえ”重視でアシストはできる限り抑える方向でしたが、それが故に日常域での取り回し性の悪さや女性ドライバーから「運転が大変」といった指摘も上がっていました。
そこで新型CX-5の開発陣は、デイリーコンフォート実現にはこの問題に正面から向き合う必要があると考え、「軽やかなフィール」と「適度なフィードバック」を両立させるEPS制御を模索。
さらに、乗り心地の改善で高G領域に体を支えるステアリングの重さが不要になった事も相まって、今回のようなステア系に仕上がったと言います。
これは個人的に「やればできるじゃない!」と感じるポイントでした。
現行マツダ車トップレベルの「乗り心地」と「快適性」
続いての驚きはハンドリングです。
ステアリングを切り始めると、従来モデルよりもロールはしますが、むしろクルマの動き出しの応答は高められています。
その先はマツダお得意の「ダイアゴナルロール(旋回時に前輪外側を沈ませ対角の後輪を持ち上げるように車体を傾ける)」ですが、その連携はマツダ車の中でもトップレベルに位置します。
つまりロールを悪とせず、逆に味方にして上手に制御することで、サスペンションを上手に沈み込ませ、自然かつ滑らかに旋回します。
その結果、マツダらしい“芯の強さ”と、マツダらしからぬ“しなやかさ”が共存したハンドリングに仕上がっています。
ここでも「やればできるじゃない!」です。

この辺りを開発陣に聞くと「ダンパーとスプリングの役割の“再配分”と、MBD(モデルベース開発)を活用した“応答性(=ダンパー減衰遅れ)”を高めた性能設計が効いています」と教えてくれました。
乗り心地はラージ商品群を超える快適性で、現行マツダ車トップレベルと言えます。
路面からの入力はとにかくカドが丸く 、揺れの収束(減衰)のさせ方も、ショックを即座にガツンと抑え込むのではなく、人間の波長に合わせてほんの少し時間をかける絶妙な味付け。
さらに縦バネが強いブリヂストン製タイヤの特性を逆手に取り、その初期応答をダンパー側で上手にいなすという役割分担はお見事です 。
ただし、全体的動的質感に関しては、良く言えばカジュアルですが、個人的にはもうすこし上げたほうが内外装とのバランスが取れるように感じました。
この辺りはラージ商品群とは明確な差があるのも事実でしょう。
そして運転支援系も強化されています。
従来のACC+ステアリング支援に加えて、「車線変更アシスト機能」「渋滞時ハンズオフアシスト機能」をプラス。
加えてトヨタのデバイスをマツダ流にアレンジした「プロアクティブドライビングアシスト」を採用するなど、機能はより充実。
今までのマツダは「自ら運転することの楽しさ」にこだわるがあまり、この手のデバイス採用は消極的でしたが、ドライバーの負担を減らすことで、結果として移動先の楽しいドライビングやアクティビティに繋がるので、筆者はウェルカムです。
また、「ドライバー異常時対応システム(DEA)」は検知角度の拡大など、安全面でも着実なアップデートが行なわれています。
ちょうどいい「等身大」のマツダが戻って来た
このような新型CX-5を総じて言うと、“マツダらしさ”を損なうことなく“ユーザーに寄り添った”クルマに仕上がっていました。
これまでのマツダ車は少し背伸びをしているように見えましたが、この新型は大衆ブランドよりも個性的で、でもプレミアムブランドほど気張っていない、ちょうどいい“等身大”のマツダが戻って来たなと。
筆者は第7世代以降のマツダ車は「旨いから食え」「この旨さは分からない方がおかしい」と、プロダクトアウト的な商品づくりに疑問を持っていましたが、新型CX-5はユーザーが何を求めているかを徹底してリサーチし、「このような食べ方もありますよ」と言ったマーケットイン的な商品づくりに変化したように感じました。
つまり、ハードの進化は一見地味ですが、作り手のマインド、つまりハートの部分の進化は大きい。
だからこそ冒頭に述べた「マツダのエースは、マツダの反逆児」と言う言葉に集約されるのです。

マツダのエンジニアのこだわりや熱血っぷりは業界トップクラスですが、それが故にユーザーニーズとの乖離を生んでしまうことも。
そういう意味では、新型CX-5は「これからのマツダらしさ」を再定義するモデルであると、筆者は分析しています。
こう書くと「ラージ商品群は失敗だったのか?」と言う話になりがちですが、半分正解で、半分間違い。
ラージ商品が存在したからこそ、新型CX-5の立ち位置が明確になったわけで、マツダにとってはどちらのラインアップも必要なのです。
ただしCX-5がここまで良くなると、ラージ商品はさらに頑張る必要が出てくるでしょう。
新型CX-5の車両価格(消費税込)は330万円~447万1500円と、先代から若干アップしていますが、売れ筋グレードは350万円~400万円に収まっています。
個人的には装備の充実とアップデートを考えればかなり頑張ったプライスだと思います。
この“反逆児”の登場により、マツダの未来が良い方向に進むと期待の高まる試乗となりました。

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