2026.03.31
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米新拠点披露の4日後… ソニー・ホンダ「アフィーラ」開発中止の深層とホンダEV戦略の誤算とは

まさにドタキャン! ソニー・ホンダモビリティ、米新拠点のお披露目式典の4日後に開発と販売を中止発表 その背景を時系列で検証してみた

 ソニー・ホンダモビリティが2026年3月25日、新型EV「AFEELA 1(アフィーラワン)」とSUVタイプの第2弾の開発と販売を中止すると発表しました。

【画像】これが発売中止になったソニー・ホンダ「AFEELA 1」です 画像で見る(30枚以上)

 アフィーラワンの予約金については全額返却となります。

 この出来事はテレビやネットのニュースで大きく取り上げられましたが、この発表を「やはり」と受け止めた人がいる一方で、「まさか!」と驚いている人も少なくないでしょう。

開発・発売が中止となったソニー・ホンダモビリティの新ブランドEV「AFEELA(アフィーラ)」
開発・発売が中止となったソニー・ホンダモビリティの新ブランドEV「AFEELA(アフィーラ)」

 3月12日に実施した緊急オンライン会見で、次世代EV「Honda 0(ゼロ)シリーズ」の「SUV」と「Saloon」、そしてアキュラ「RSX」の開発と販売を中止すると発表。

 そのほか、中国を含めてEV戦略の大幅見直しに伴う経費が2026年3月期と2027年3月期で最大2兆5000億円に及ぶ見通しとなり、2026年3月期は最大6900億円の赤字の見通しだと公表しました。

 ホンダが上場して以来、赤字に転落するのは今回が初めてのことです。

 一般ユーザーや投資家から見れば、こうしたホンダのEV戦略転換がソニー・ホンダモビリティの事業にも影響を及ぼすと考えるのが自然でしょう。

 アフィーラの生産はホンダがアメリカで行う計画だったため、「0シリーズ」とハードウェアとソフトウェアで部品の共通性が考えられるからです。

 実際、オンライン会見でホンダの三部敏宏社長は記者からの質問に対して「ソニー・ホンダモビリティはホンダにとってSDV戦略で重大なプロジェクトであり、今後の事業展開の方向性を株主間で協議していく。きょう時点で決まったことはない」と説明しています。

 それから9日後、アメリカ西海岸時間の3月21日には、カリフォルニア州トーランス市で「アフィーラ・スタジオ&デリバリーハブ」お披露目会を開催。

 トーランス市長もその場にかけつけ、関係者らがテープカットを行い地域コミュニティとの関係を強調したばかりでした。

 関係者は当然、これを皮切りに同社の事業がさらに拡大していくことを期待したはずです。

 ところが、このお披露目会の4日後にいきなり事業の抜本的な変更を発表したことは、ユーザー、社員、サプライヤー、そして地域社会に対する企業としての社会的責任が問われかねない重大な問題だと感じます。

 結果、こうした振る舞いによってソニー・ホンダモビリティのブランドイメージが大きなダメージを受けたと言わざるを得ません。

 では、どうしてこうした結末を迎えることになったのでしょうか。

 ソニー・ホンダモビリティのこれまでの歩みと、その時々での市場の動きを振り返ってみましょう。

 ソニーとホンダの協業の事実が表に出たのは、2022年3月4日のことでした。

「モビリティ分野における戦略的提携」に向けて基本合意し、同年6月16日のソニー・ホンダモビリティ設立に関する合弁契約を締結しています。

 この時期は、グローバルでEVバブルがピークを超え始めていた印象がありました。

 EVバブルの起点は、2015年のCOP21(第21回 気候変動枠組条約・締約国会議)で採択されたパリ協定です。

 これにより、グローバルで環境ビジネスへの投資が急拡大し、その中にEVが巻き込まれた形です。

 その上で、アメリカと中国が環境政策における投資マネーの奪い合いとなり、その中間に欧州が挟まれるといった図式が2020年代に入ってからも続いていきます。

 しかし2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が始まるとエネルギー安全保障の観点で環境投資の風向きが変わったと言えるでしょう。

 さらに、その前の2020年春からコロナ禍となっており、人々のライフスタイルに変化が生じ、また各種企業の事業計画が大幅に修正されていきます。

 こうした中、ソニー・ホンダモビリティの設立発表記者会見が2022年10月13日、都内で開催されました。

 その時に示された量産に向けたロードマップでは、第一弾の先行受注を2025年前半から開始し同年中の発売。デリバリーは北米で春から、日本では2026年後半からと説明しています。
 
 この記者会見後、集まった報道関係者の中からは「もっと大きな話を期待していたのに、新型EV事業の発表の域に留まった印象だ」という声が聞こえてきました。

 いわゆる「ムーンショット(破壊的なイノベーションをもたらす変革)」に対する期待が強かったからです。

 実際、筆者は代表取締役会長兼CEOでホンダ出身の水野泰秀氏と、代表取締役社長兼COOでソニー出身の川西泉氏に対して「日本を代表する2つのグローバル企業として、自動車産業界のデファクトスタンダード(事実上の標準化)を狙うような事業戦略で挑むのか?」と聞いたのですが、ストレートな回答が得られませんでした。

 2024年に入ると、ホンダが斬新なデザインで車内エンタメ機能も充実した「0 (ゼロ)シリーズ」を発表。

 同年後半には、栃木県内のホンダ関連施設で同プロトタイプ試乗し、担当エンジニアらと意見交換する中、「アフィーラ」との差別化の難しさを感じました。

 その後、2025年に入ると第2次トランプ政権がバイデン政権の環境関連政策に対する抜本的な見直しに着手。

 例えば、IRA(インフレ抑制法)によるEV購入での最大7500ドルの税額控除が9月末で打ち切られ、北米でEVに対する逆風が一気に強まりました。

 また、ホンダも記者会見で強調したように、カリフォルニア州の環境規制が大幅に変更されたことで、カリフォルニア州を起点に事業拡大を狙っていたソニー・ホンダモビリティへの影響が強まったと言えるでしょう。

 北米市場全体でEV逆風が強まる中、デトロイト3(GM、フォード、ステランティス)はEV事業縮小に伴い巨額の損失を計上し、業界全体の流れにホンダも同調する形になり、その余波がソニー・ホンダモビリティに及ぶことになったのです。

 こうしてソニー・ホンダモビリティが世に出てからの約4年間を振り返ってみますと、アフィーラワンと第2弾モデルの開発・販売中止の原因は北米EV市場減速だけではなく、前述にような「ムーンショット」に対する市場の期待と現実とのギャップも強く影響していると感じます。

 ソニーとホンダはそれぞれ、ソニー・ホンダモビリティの今後について次にように説明しています。

「EVを取り巻く最新の市場環境を踏まえ、今一度、ジョイント・ベンチャーの設立主旨に立ち返り、中長期的なソニー・ホンダモビリティの在り方、モビリティの進化への貢献の可能性、事業の方向性について3社で協議・検討を行い、明確化した上で、なるべく早いタイミングで公開したいと思います」

 今後の動向を注視していきましょう。

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