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2026.03.07
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都営バス“最強”の秘境路線「上成木行き」終点はどんなところ? “最果てバス停”はトンネル抜けたら「すぐ埼玉」 超のどかな「梅76」系統に乗る 〜果てなき路線バスの旅〜

都バスの秘境路線!? 「梅76」系統に乗ってみた!

 街で見かける路線バスの路線網は、毛細血管のように全国各地に張り巡らされ、都市間を結ぶだけではなく、大通りから1本入った生活道路や狭隘な路地、鉄道のない僻地、山奥の秘境を走る路線も数多くあります。
 
 バス停をひとつずつ辿りながら路線バスで目的地を目指す旅は、“直行の旅”ではなく、クルマや鉄道旅行では一瞬で見逃してしまう「その土地の素顔」を知ることができます。
 
 地元の乗客に溶け込み、観光客としてではなく、「その町の日常」にそっとお邪魔しているような感覚は、他の移動手段ではなかなか味わえません。
 
 今回は、東京都民の“アシ”である都営バス(東京都交通局)で、ほぼ埼玉県の「秘境」に行ける路線に乗ってきました。

【画像】「秘境すぎる…」 これが都バスの最果ての地「上成木」バス停です!(30枚以上)

 都営バスは主に東京23区内のJR山手線内を中心とし、荒川の西側や江戸川区の広い範囲で運行していますが、実は多摩地域の一部でも運行しています。

 西武拝島線の東大和市駅や同・新宿線の花小金井駅、JR青梅線の青梅駅や河辺駅などでも乗ることができ、ネットワークは23区内ほど密集してはいないものの、青梅街道を中心に地域輸送を担っています。

 さて、その路線のひとつである「梅76」系統は、青梅駅と宮ノ平駅の中間にある「裏宿町」から青梅駅を通って市内中心部を巡り、その後成木街道を通って、終点「上成木(かみなりき)」バス停まで向かう路線です。

 バス停を地図で辿っていくと、途中までは市街地ですが、JR青梅線から北に進むとどんどん山の中に入っていきます。

 終点の上成木バス停は、「都営バス最高地点」という異名を持つ最果てのバス停で、標高は300mと少しです。都営バスで「東京タワー(333m)」のトップデッキ(250m)よりも高いところに行けるのは驚きです。しかも埼玉県まで歩いていける地点にあります。

 果たしてどんな旅ができるのか。暖かい晴天に恵まれた2026年2月27日、旅(とバス)好きのくるまのニュース編集部員Nが乗り通してきました。

都営バスの秘境路線 「梅76 上成木行」に乗って終点へGO!
都営バスの秘境路線 「梅76 上成木行」に乗って終点へGO!

 青梅駅に降り立ったのは7時30分頃。駅前のバス乗り場は2つしかなく、都営バスは交番の前にあります。梅76以外にも青梅駅を通る路線は多く、バスを待つ10数人程度の通勤・通学客の姿も見えます。

 何本かのバスと、それに乗っていく通勤・通学客を見送ったあと、梅76がやってきました。車両は青梅支所所属のH878号車(三菱ふそう「エアロスター」・2PG-MP38FK)。車両は23区内のとさほど変わりませんが、フロントには「後のり」の表示が目立ちます。

 多摩エリアの都営バスは、都心部のように前扉から乗って支払い、中扉から降りる均一運賃ではなく、後ろ(中扉)から乗り、降りるときに前で運賃を支払う方式となっているためです。

 ICカードのタッチを忘れずに、後ろの扉から乗ってみます。さきほどのバス停の人の多さとは裏腹に、梅76には誰も乗りませんでした。

 7時47分定刻に出発した時点で、乗客は結局筆者(くるまのニュース編集部員N)ひとりだけでした。ちなみにこの路線は1日4本のみ。これを逃すと次は10時39分です。

 駅を出ると旧青梅街道を走ります。古くからありそうな瓦葺きの金物店や呉服店なども立ち並び、かつての宿場町の面影を感じます。

 最短ルートではない旧街道を巡れるのも、バス旅ならではでしょう。そしてこうした歴史ある商店が残っているのも、もしかすると今のうちかもしれません。写真はそこそこに車窓を楽しみ、景色を脳裏に焼き付けておこうと思います。

「昭和レトロ商品博物館」という施設が見え、もう途中下車して寄り道したくなりました。

 バス旅の魅力は、途中で見つけたスポットに立ち寄れることもひとつありますが、その気持ちを抑えつつ、乗り続けます。

 バスはそのまま東青梅駅まで東に進み、青梅市役所を経由して東青梅駅北口に回ります。ここからいよいよ成木街道に入っていきます。車内は数人の乗客が乗ってきました。

「次は終点 上成木です」のアナウンスが聞こえてきた
「次は終点 上成木です」のアナウンスが聞こえてきた

 青梅駅出発から約20分。駅前のにぎわいは徐々に薄れ、ぽつりぽつりと建物が少なくなっていきます。「聖明福祉協会前」バス停で数人が降りると、あたりはすっかり山道になってきました。

 窓に映る自然たっぷりの景色に対し、23区内と同じ車内アナウンス、座席にある都営バスのマスコットキャラクター「みんくる」の組み合わせが、いよいよ違和感を発揮してきました。

 そして「黒沢」バス停をすぎると、トンネルに突入します。都営バスが郊外のトンネルに入っていくのは、やはり違和感しかありません。ここは「新吹上トンネル」で、吹上峠を通過します。旧トンネルも隣にあるようで、心霊スポットとして有名なんだとか。

 トンネルを抜けると成木8丁目という交差点に当たります。この交差点は「2回」通ることになります。

 どういう意味かわからないと思いますが、まず交差点で左ルートに進み、都道193号線を進んでバス停を2つ通過したあと、「北小曽木」バス停でUターンするのです。

 Uターンせずにそのまま進めば、終点の上成木までサクッとショートカットできるのですが、大型車ではすれ違いが難しい狭さです。

 成木8丁目の交差点に戻り、青梅駅方面から見て右ルートの都道53号線に進みます。Yの字の経路をたどることになります。

 バスはそのまま成木川に沿うルートを通り、カーブもかなり増えてきました。気がついたら乗客は私ひとりだけになっていました。

「落石注意」の看板もあり、低速ギア固定でエアロスターの力強いエンジンが響き渡ります。山道を走っていることを実感しました。

 普通の都営バスなら、信号に次ぐ信号でストップアンドゴーばかりですが、巧みなハンドルさばきで山道をぐいぐいと止まらずに進んでいきます。

 青梅駅出発から約30分、「次は終点、上成木」のアナウンスが聞こえてきました。

都バス「最強の秘境バス停」 上成木はどんなところ?

 定刻の8時28分に終点の上成木に到着。前扉から降ります。タッチを忘れそうになり、慌ててICカードを取り出して精算します。

 上成木バス停は、そのまま埼玉県方面に向かう都道53号線と、この道路に並行するかたちで成木川に沿い、そのまま行き止まりとなる都道202号線の分岐部にあります。

 ちょうどこの2つの道をショートカットするような連絡路があり、ここが折り返し場兼バス停です。バスはそのままこの連絡路を通って、青梅駅方面に折り返していきます。一般車は立ち入り禁止です。

 バスを降りると周囲は自然たっぷりで、平日朝だったためか、クルマも人もほとんど通りません。鳥のさえずりと、成木川のせせらぎだけが聞こえてきます。3月初頭で緑がなかったので、新緑の季節にもういちど訪れてみたいです。

 バス停には木製の小さな待合所と公衆電話もあります。なんともない、のどかなバス停ですが、イチョウマークのバス停と(当然ですが)都営バスの見慣れたカラーの車両が停車中です。

終点上成木で折り返し発車時間を待つ都営バス。23区のビル街でも見るカラーリングとのどかな風景がアンマッチ
終点上成木で折り返し発車時間を待つ都営バス。23区のビル街でも見るカラーリングとのどかな風景がアンマッチ

 普段の都営バスで鬱陶しく感じる都会の喧騒はすっかり聞こえなくなり、「都営バスでこんなところまで来れるのか」という感動をひとしきり味わったあと、折り返しまで少々時間があったため、担当の運転士さんに利用状況を聞いてみました。

「今の季節だとあまりここ(上成木)まで来る人は少なく、なんとも寂しい季節ですね。レジャーの季節だと、登山と川遊びで乗る人もいます。上り(青梅駅方面)はたまに乗ってくるひとがいますよ」

 運転士さんの話通り、バス停周辺には高水山などからなる「高水三山」や、黒山などがあります。

 紅葉でも有名なハイキングスポットで、本格的な登山ではないものの、ちょっとした冒険気分を味わうのにはぴったりでしょう。いずれも800m近い標高があり、バス停から1時間から2時間くらいで行けるスポットです。高水三山の登山口はバス停のすぐ近くにあります。

 バス停正面の成木川はオイカワやヤマメが釣れ、夏にはホタルも見られるそうです。

 さらに、都道53号線を歩けば、そのまま埼玉県飯能市の名栗地区に入ることも可能です。バス停から見えるトンネルの都県境までは、わずか700m弱。クルマなら5分足らずということで、せっかくなので歩くことにします。

小沢トンネル。この中に埼玉県との県境があります
小沢トンネル。この中に埼玉県との県境があります

 折り返しの出発を待つ運転士さんから「(折り返しに)乗らないんですか」と聞かれましたが、「埼玉方面まで歩きます」と告げました。

 カメラなどの準備をしていると、青梅から乗ってきた車両は行先表示器を「梅76 裏宿町」に変え、いよいよ折り返すようです。運転士さんは「お気をつけて!」と手を振ってくれました。とても気さくな運転士さんで、埼玉入りまで頑張ろうという気持ちになりました。

 しかし、埼玉まで近いとはいえ、それなりの登り坂で息が切れます。当日は暖かかったこともあり、汗が吹き出てきます。

 ようやく都県境のトンネル「小沢トンネル」に到着。トンネルの入口で振り返ると、上成木のバス停が見えます。ギリギリ埼玉手前だったことがわかります。

 トンネルは歩道が激狭で1人しか歩けず、ところどころ湧き水で湿っています。滑って転びそうになり、靴が汚れますが仕方ありません。バス旅の際は荒れた路面を歩くことも想定し、汚れてもいい靴と服装が必要かもしれません。

 すると中間地点ほどで、トンネルの上部に照明とは違う光が見えました。近づいてみると、「埼玉県」と表示する電照式の県境案内でした。ついに埼玉入りです。クルマではほんの一瞬かもしれませんが、じっくり県境をまたぎます。ちょっと進んで振り返ると、「東京都」の表示も確認できました。

 さて、ここから先は埼玉県飯能市の峠「小沢峠」になります。20分ほど山道を歩けば、国際興業バスの「小沢」バス停があります。ここを行先に定め、次に乗るバスを探すとします。

※ ※ ※

 ビル街で見慣れたカラーリングの都営バスが、気がついたらぐんぐんと山を登っていくという「違和感の塊」な梅76。終点はさえずりとせせらぎが聞こえる静かな山の中にある「秘境」でした。

 周辺には高速道路も国道もなく、経由するのは旧街道。目的地直行の旅では味わうことができない道や景色を堪能しました。

 バス旅で必要なのは、ちょっとの勇気と思い切りと運賃だけ。整理券を手に取り、シートに腰をかければ、知らない地名のアナウンスとともに、見たことない景色が車窓に映ります。

 旅に出るのに、あえての「路線バス」という選択。路線廃止にならないうちに、一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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